昨季は登板なし…岩田578日ぶり白星に号泣

[ 2011年5月6日 06:00 ]

<巨・神>7回、坂本を三振に仕留め、雄たけびを上げながらガッツポーズを決める岩田

セ・リーグ 阪神2―1巨人

(5月5日 東京D)
 涙の復活だ!阪神・岩田稔投手(27)が5日、7回1失点で今季初勝利を挙げた。1軍公式戦での白星は2009年10月4日の中日戦(甲子園)以来、578日ぶり。巨人戦は08年7月8日(甲子園)以来となった。ヒーローインタビューでは「うれしい。いろんな人にお世話になった。家族が支えになった」と感極まり号泣するシーンも。左腕の好投が光りチームはカード勝ち越しを決めて再び5割に戻した。

 涙に染まった復活劇だった。マートンから受け取ったウイニングボールを岩田は震える左手でしっかりと握りしめていた。しかし、試合後のヒーローインタビューでは抑えていた感情がついにあふれ出た。

 「…すごく、うれしいです」。必死にこらえながら顔をゆがませ、何度も言葉に詰まりながら思いの全てを吐き出した。普段はポーカーフェースを崩さない男の頬を、光るものが伝っていた。

 「ふがいない投球をしていたので悔しい思いがあった」

 今季4度目の先発でようやくつかんだ1勝は文句のつけようのない内容だ。最速147キロを記録した直球とウイニングショットのスライダーに加え、この日はカーブも駆使し巨人打線に立ち向かった。「いろいろな球を使って抑えにいこうと思った」。失点は4回に浴びたラミレスの一発のみ。7回は2死一塁から坂本をフォークで空振り三振に取ると小さく肩を揺らし“ガッツポーズ”。前回苦杯をなめた沢村との投げ合いも制した。

 昨年3月に左肘手術に踏み切った。シーズンを棒に振り、1軍のマウンドが果てしなく遠く感じられた1年。同期入団の鶴が昨年5月にプロ初勝利を挙げた時も「若手が伸びてきていて自分もうかうかしていられない」と厳しい表情で危機感を募らせた。それでも、ボールを握ることもおぼつかなかった6月中旬に刺激を受ける試合を目にした。リハビリを行っていた鳴尾浜球場で行われた育成試合に母校・大阪桐蔭高校野球部の後輩が大和高田クラブの一員として阪神2軍と戦っていた。プロへの道をあきらめずにユニホームを泥だらけにしながらボールに食らいつく選手たち。後輩の姿がまぶしく映るとともにプロの世界に身を置ける喜びをあらためて実感した。試合後には感謝の思いも込めてグラブ、手袋など段ボール一箱分の野球道具をチームにプレゼント。原点に立ち返った日を今でも決して忘れてはいない。

 「トレーナーや医学療法士の方、いろんな人にお世話になった。きょう勝てたことで恩返しになったと思う。支え?やっぱり家族ですね」

 これまで3度の先発機会でいずれも試合をつくったが黒星を喫した。うちひしがれる背中を押してくれたのは妻・美佳さんだった。「腐らずに頑張っていこうね」。その一言があったからまたマウンドに上がれた。「まだ5月に入ったばかりなのでこれからもチームのために頑張りたい。これだけで終わりたくない」。一男二女のパパは、こどもの日に578日ぶりの勝利を収めた。チームのために家族のために、岩田が大きな一歩を踏み出した。

 ▼阪神・真弓監督 ずっといい投球してたけど勝ちがつかなかったからよかった。勝ちがついていい影響があるんじゃないか。

続きを表示

この記事のフォト

2011年5月6日のニュース