ラミレス激走が口火　一気４点炎の５連打

＜西・巨＞７回１死、ラミレスが二塁打を放ち、滑り込む

　【巨人７―３西武】試合終了後のベンチ裏。８回に代走を送られ、ベンチで勝利を見届けたラミレスは落ち着いた息遣いと裏腹の、興奮した表情で振り返った。

　「打球がセカンドキャンバスに当たった瞬間、イチかバチか、二塁まで行くつもりだった。ギリギリだったけど、リスクを冒したかいがあった」
　息を切らした主砲の激走が逆転の“ビッグイニング”を呼び込んだ。７回１死。二塁ベースに当たって右翼方向に転がった打球を見たラミレスは、福王一塁ベースコーチの制止を振り切って二塁を陥れた。「（ストップは）聞いたような、聞こえなかったような」とおどけたが、この積極性が涌井のリズムを乱した。
　続く阿部が外角球に食らいついて同点右前打。亀井が中堅フェンス直撃の二塁打、脇谷は左中間を破る決勝２点三塁打だ。それまで打率・０８３だった坂本まで適時二塁打で続くなど、４本の長打を含む怒とうの５連打で一挙４点。天敵・涌井をＫＯした。李スンヨプがベンチに下がったため、三塁で先発した脇谷は２打席目まで凡退も、ここ一番での値千金打に「つなぐ意識だった。ラミちゃんも激走して…。後悔しないように打席に入った」と興奮を隠せない。
　米国でのマイナー時代は走攻守そろった野手だったラミレスも、体重の増加とともに足は遅くなった。敵地での第３戦はＤＨで出場。守備のないＤＨを「好き」と公言する主砲には“鈍足”のイメージがつきまとうが、大一番で本能のままに足が動いた。打つだけじゃない主砲の活躍に、原監督が「勢いをつけた」と目を細めれば、伊原ヘッドコーチも「ああいう走塁が盛り上げる」と称賛した。
　第２戦のサヨナラ弾に続くビッグプレーで、シリーズＭＶＰも現実味を帯びてきた。「チーム全員でつかんだ逆転劇だと思う。土曜日（８日）で日本一を決めたいね」。ラミレスの宣言は、限りなく頼もしかった。

　＜坂本汚名返上打＞坂本が汚名返上の適時打を放った。守備では３回１死から中島の遊ゴロを一塁へ悪送球。二塁進塁を許して勝ち越し点を献上した。その悔しさをぶつけるように７回、５連打の最後を締める左中間二塁打。打席に入る前に生還した阿部から「思い切っていけ」と言われた言葉を実行した若武者は「エラーを取り返したい一心でした」と胸をなで下ろした。