マー君 打たせて取って111球完投

[ 2008年3月30日 06:00 ]

<楽天・日本ハム>場内1周を終えた楽天・田中は野村監督の沙知代夫人とバックネット裏の席で言葉を交わし笑顔

 【楽天7―2日本ハム】マー君が省エネ完投で今季初白星だ。楽天・田中将大投手(19)が29日の日本ハム戦(Kスタ宮城)で9回を4安打2失点の好投。プロ4度目で最少の111球での完投勝利で、チームに3年ぶりの本拠地開幕戦白星をもたらした。26日の永井、27日の岩隈に続く3試合連続完投勝利は球団史上初の快挙。体調が万全ではなく奪三振は6にとどまったが、打たせて取る“大人の投球スタイル”を手に入れた。

 まだ、余力はあった。クラブハウスへ続く階段に足をかけた田中が、宝物を見つけたような笑顔を見せた。階段を軽やかに上りながら、プロ入り最少の111球完投を振り返った。
 「111球ですか。誕生日(11月1日)ですね。コースに投げ込めば打たせて取れる。ゴロとかフライが多かったけど、そういうふうに抑えるのも楽しいと思いました」
 初回2死一塁から、スレッジに先制2ランを被弾。パ・リーグでは野村兼任監督時代の71年南海以来となる3戦連続1投手による完封勝利はいきなり消えた。だが、その一発が“進化”のきっかけになった。「いつもなら三振を狙うところも打たせて取って、と気持ちを切り替えられた」とモデルチェンジ。2回以降は直球も平均145キロ前後に抑え、コーナーを丁寧に突く投球でわずか2安打に抑えた。それでも9回、三振に斬った最終打者のスレッジにはこの日の最速150キロを2球計測。結果的に「全然、調子が良くなかったけど、こういう時にいろいろ(引き出しを)持っていれば勝ちにつながる」と最後まで力を温存する完投ペースを手に入れた。
 “ケガの功名”だった。順風満帆に見えた2年目のスタート。実はオープン戦に初登板した3月1日のロッテ戦(長崎)でアクシデントがあった。投球中に腰に強い張りを覚え、翌日の練習ではランニングを中止した。不安を抱えながらも中6、5日の登板間隔を守り開幕に突入。初登板の22日のソフトバンク戦(ヤフードーム)では134球を投げたが、翌23日に「今までにないダメージが来た」と漏らした。
 この日の8回には橋上ヘッドコーチがベンチ前で「完投したいか聞いたよ。腰のこともあるしね。だけど“行きます”って怖い顔で言われちゃった」と確認するなど万全ではなかった。だが、そんな中でも「全部、投げるつもりでマウンドに上がった」。19歳右腕の責任感が、省エネ投球の新スタイル確立につながった。
 三木谷球団会長、沙知代監督夫人らも観戦した本拠地開幕戦で3年ぶりの白星発進。「連勝で来ていたので自分で流れを止めないようにと思っていた。あしたも勝てるように朝井さんに頑張ってもらいたい」。悪夢の開幕4連敗から3戦連続完投勝利。チームを上昇気流に乗せた田中は、ちょっとだけ胸を張って先輩にバトンを託した。

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2008年3月30日のニュース