勝敗分かれ目…錦織「イチかバチか」リスク承知のストレート

[ 2014年9月5日 08:26 ]

必死にレシーブする錦織(AP)

テニス全米オープン第10日 男子シングルス準々決勝

(9月3日 ニューヨーク ビリー・ジーン・キング・ナショナル・テニスセンター)
 錦織がこの日一番大きなリアクションを見せたのは第3セットのタイブレークの最中だった。ガッツポーズだけではない。一番大きな勇気を見せたプレーでもあった。

 サーブを続けて破られ6―7とセットポイントを握られた場面。ワウリンカのセカンドサーブを錦織が返球。ワウリンカのフォア、錦織のバックとラリーが続く。そしてフォアの逆クロスが錦織のバック側のコーナーを突いた。斜め後ろに動きながら追いついたが、ベースラインから2メートル近く下げられていた。だが、この厳しいポジションから重い球を思い切りストレートに切り返した。下がった位置からの決定打は拾われやすくなるが、サイドラインをなぞるように飛んだショットを相手は見送るしかなかった。

 「ベースラインよりも、あんなに後ろからストレートに打つのはセオリー的にはよくないこと。自信もあったけどイチかバチかだった」。セオリーに沿って安全に戦うだけでは勝機はつかめない。リスクを冒してピンチをしのぐと、3ポイント連取で第3セットをものにした。ここを落としてリードを許せば、限界近くでバランスを保っていた心身の均衡は一気に崩れていたかもしれない。「ハーッ!!」と雄叫びを上げた右拳で、どんどんと胸を叩いた様子が、この一撃の持つ意味の大きさを表していた。

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