理事長“延命”ならず「実は吸いました」

[ 2008年9月8日 20:53 ]

引きずり下ろされた悪あがき北の湖理事長

ロス巡業でも吸ッタモンダ…露鵬&白露山解雇

“北の湖を止めた男”が責任重大新理事長

 日本相撲協会の北の湖理事長(元横綱)が8日、ロシア出身の幕内露鵬と十両白露山の大麻陽性問題を受け、ついに辞任した。度重なる角界の不祥事が続いても“延命”してきた理事長だが、今回だけは免れることはできなかった。

 ▽1人は告白?
 2日に行われた相撲協会による抜き打ちの簡易尿検査。2人合わせて5回も陽性反応を示した露鵬、白露山は「絶対に吸っていない。吸ったこともない」と一貫して使用を否定し続けた。白露山の師匠でもある北の湖理事長も「何度聞いてもやってないと言う。だから処分なんて、できる訳がない」と弟子の言葉を信じ切っていた。

 ところが水面下では、とんでもない“新事実”が取りざたされていた。関係者によると、簡易尿検査の際に約6時間も検査場で待機していた両力士に、再発防止検討委員のある親方が聞いた。「本当はどうなんだ。ここだけの話だから言ってみろ」。すると兄弟のうちの1人が「実は6月のロサンゼルス巡業で黒人のシンガーから大麻をもらい、吸いました」と答えたという。

 8日の再発防止検討委員会でこの件を追及された両力士は「そんなことを言ったかどうかは忘れた。日本語がほとんど分からない」などと、とぼけ続けた。これが委員の心証を悪くした。「限りなくクロに近い」との委員会報告となり、解雇につながった。弟子をかばい続けた北の湖理事長も延命の材料を失った。

 ▽「休養案」通らず

 辞任後の記者会見で「(辞任は)前の日から考えていた」と言った前理事長。だが関係者によれば、理事会の冒頭では自身のプラン通りに「弟子の白露山の新たな検査結果が出るまで、理事長職を休養したい」と申し出た。理事長を除く出席者16人は沈黙。白けたムードが充満した。

 ここで複数の理事が反旗を翻す。「何をそんな…。病気でもないのに、それは通らないでしょう」「クロという事実と数値がすべてじゃないですか」。思わぬ突き上げに動揺した理事長は、降参するしかなかった。「分かった。それだったら、わたしは退きます」。辞任決定の瞬間だった。理事退任も申し出たが、これは“温情”で留め置かれた。理事会終了の数分後、役員室に戻った前理事長は後任に武蔵川理事(元横綱三重ノ海)を指名。トップの交代劇は、あっという間に終わった。

 ▽解任シナリオも

 元大関のある親方は前夜から言っていた。「理事会の後に評議員会が設定されているのは、理事長にとってかなりのプレッシャーだろうな」

 その言葉通り、親方衆は動いていた。理事会で理事長辞任が決まらなかった場合、評議員会で解任するシナリオが描かれていた。親方衆は、解任決議に必要な賛成票を確保。別の中堅親方も「もし何も決まっていなければ、われわれは評議員会で黙っていない。理事総取っ換えを要求するくらいの気持ちだ」と意気込んでいた。

 北の湖理事長は不祥事続きの昨年から、対応が後手に回りっぱなしだった。「おれが辞めずに、世間からの批判をすべて受けることで協会全体の風よけになれればと思うんだ」と話したのは、わずか4日前のことだ。しかし弟子の大麻吸引の動かしがたい証拠に加え、気が付かないうちに「反北の湖派」に外堀も埋められていた。土俵際で残す力は残っていなかった。辞任後、「もう、すっきりした。おれの顔、どうだ? 笑っているだろう」。問題山積の現状から解放され、最近は見せたことのない笑みがこぼれたのは皮肉だった。

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2008年9月8日のニュース