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【コラム】西部謙司

バイエルン・ミュンヘンの変身

[ 2014年10月23日 05:30 ]

CLローマ戦の翌日、ローマ法王フランシスコと握手を交わすバエイルン・ミュンヘンのグアルディオラ監督
Photo By AP

 ペップ・グアルディオラは天才的な監督だと改めて思った。CL第3節のローマ戦、バイエルン・ミュンヘンはアウェーで7-1の大勝、前半のうちに5点を叩き込んで完全に勝負を決めてしまった。

 ハーフタイムでのスタッツは、バイエルンのボールポゼッションが59%だった。昨季は70%も珍しくなかったバイエルンとしてはかなり低い数値である。しかし、ローマには4本のシュートしか許さず、枠内は1本に抑えていた。内容的にはほぼ何もさせ ていない。これが今季のバイエルンのやり方なのだ。

 フォーメーションは3-6-1。3人のDFがフラットに並ぶ形は、日本のファンには懐かしい「フラット・スリー」である。3人の前にはシャビ・アロンソがいて、この4人が後方のセットだった。1トップはレバンドフスキ、両サイドにロッベンとベルナトのウイングバックを置く。そして、中央部はミュラー、ゲッツェ、ラームの3人が動き回り、パスをつなぎまくる。

 MFに6人というのがポイントだろう。中盤にスペースがない。ローマはパスをつなごうとしても、ことごとくプレッシャーをかけられて行き詰まっていた。逆にバイエルンのパスワークを分断しようとしても、FW3人では後方の4人セットのパス回しを追い切れない。そう なるとMFが釣り出され、バイタルエリアにつながれてしまう。

 守備ではハイプレッシャー、攻撃では相手MFの釣り出し。この2つが、今季のバイエルンが狙いのようだ。ポゼッションが落ちたのは、パスの精度が落ちたのではなくシュートへ早く持ち込めるようになったからだ。

 昨季のCL準決勝では、レアル・マドリードの高速カウンターに完敗を喫している。ボールポゼッションでは圧倒したものの、レアルの守備陣を崩せず、逆にロナウドを中心とするカウンターにやられた。そこで今季は、相手を包囲するのではなく手前に引き出す攻撃を用意した。そして、カウンターをさせないハイプレッシャーを強化したのだ。

 グアルディオラ監督が3バックに着手したと聞いたときにはバルセロナ型 の3-4-3だと思っていたが、どうやら全くそれとは違うようである。監督は目の前の問題を解決しなければならない。バイエルンはCL制覇のために、昨季のレアル戦で出た問題を克服しなければならなかった。ただ、そのソリューションが予想のナナメ上というところがグアルディオラ監督らしく、天才的なところである。(西部謙司=スポーツライター)

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