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【コラム】西部謙司

W杯1周め GLで2失点以上のチームは決勝へ行けない

[ 2014年6月19日 05:30 ]

ガーナ戦で決勝ゴールが決まり喜び合う米国代表イレブン
Photo By AP

 W杯グループリーグの1試合目が終了。全チームが緒戦を終え、ブラジルとメキシコは2試合目に突入した。全部の試合を見たわけではないが、逆転勝ちの多い攻撃的な試合が多い。

 優勝候補筆頭のブラジルはやはり堅守が目立つ。攻撃はネイマール次第だろう。プレーメーカーがいないため、相手に引かれると個人技の打開しかないのはコンフェデレーションズカップのときと同じだ。そのブラジルと2戦目で引き分けたメキシコは、日本が参考にすべきチームだ。パスワークの良さをどう生かすか、体格の不利をどうカムフラージュするか、メキシコに学ぶ点は多い。

 スペインを撃破したオランダは戦術がハマっていた。日本の選手がよく口にする「自分たちのサッカー」を、オランダはいったん止めた。オランダは自国のサッカーへのプライドが高いが、それをいったん脇に置いて戦ったのだ。相手のスペインとはプレースタイルが兄弟のように似ているので、どうすれば相手が困るかを知り尽くしていた。

 日本はコートジボワールに競り負け。攻撃が良くて守備が弱い同士、主導権争いがポイントになるゲームだった。相手のビルドアップを制限できず、香川と長友のいる左サイドが守備で疲弊したのが痛かった。今大会はどのチームもビルドアップが進化している。逆に、そこを制限できないと勝ち残れない。その意味で、 日本の敗戦は典型的な例だった。

 アルゼンチンは完全にメッシ仕様のチーム。過去にもマラドーナやリケルメといった10番中心主義をとっていたが、今回もその意味でアルゼンチンらしい。イランとナイジェリアはW杯の水準にないチームなので、アルゼンチンに敗れたとはいえボスニアは勝ち上がれそうだ。

 大勝スタートのドイツは優勝候補にあげられるが、ポルトガル戦の内容が特別によかったわけではない。ペペの退場が試合を変えている。負傷者続出のポルトガルはメンタルの強さが求められる。

 アメリカ―ガーナは決勝トーナメントの試合のようだった。アメリカが意地をみせてW杯3連敗を阻止している。予選絶好調だったベルギーはカウンター型で、引かれてしまうとさほど工夫がない。アルジェリアに危うくやられそうだったが、パワープレーで逆転に成功した。ベルギーはノックアウトステージのほうが力を発揮しそうだ。

 グループリーグの段階では攻撃的でゴール数も多いが、決勝トーナメントに入るとガラリと内容が変わるのがいつものW杯である。グループリーグで2失点以上しているチームでは、おそらく決勝へ行けない。(西部謙司=スポーツライター)

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