藤井正弘の血統トピック

【安田記念】シャーク&リアル 受け継がれるディープのマイル特性

[ 2015年6月3日 05:30 ]

 今年の安田記念には恒例の香港馬の参戦がなかった。

 安田記念が日本調教馬だけで争われるのは国際競走となった93年以降で2度目。ちなみに前回の03年は優勝馬アグネスデジタル、4着イーグルカフェ、17着タイキトレジャーと、3頭の外国産馬が出走していた。出走全馬が日本産という今回のケースは、国際競走としてのレース史上初めてである。マイル部門においても日本の競馬が独自の進化を遂げたことの表れといえるだろう。

 種牡馬単位の最大派閥は国産マイラーのレベルアップをけん引してきたディープインパクト。マイラー製造サイヤーとしての性能は、その父サンデーサイレンスの上を行くもので、G1マイラー3頭を含む6頭のエントリーがある。

 レーティング最上位のリアルインパクトは7歳を迎えた今年、オーストラリアでG1ジョージライダーSを制した。年齢的な衰えどころか、今がまさに全盛期といった印象。6歳違いの半兄アイルラヴァゲインも8歳時にオープン特別を勝つなど、10歳まで息長く活躍した馬で、特異なアンチエイジング属性は母系に由来する部分も大きいのだろう。4年ぶりの同一G1制覇という快挙達成も大いに期待できる。

 リアルインパクトと同期のダノンシャークは3年連続の挑戦となる。98年の優勝馬タイキシャトルとは、同じ母の父カーリアンを経由したヘイルトゥリーズン・クロスを内蔵する点でも似通った血統構成。ヴィクトリアマイルを勝った女傑ブエナビスタも「母の父カーリアン」で同工の配合パターンだった。東京コースのマイルG1にも潜在的な適性は十分で、こちらは三度目の正直を狙う。

 ミッキーアイルは3代母のステラマドリッドが北米G1・4勝の名牝。牝系は父の宿敵ハーツクライと同門で、間接的ながら呉越同舟が成立していることになる。イメージ以上に奥の深いタイプだろう。父として00年の優勝馬フェアリーキングプローン、01年の2着馬ブレイクタイムを出すなど、一昔前の安田記念で猛威を振るったデインヒル血脈を母の父ロックオブジブラルタル経由で継承しているのも強調材料だ。そのロックオブジブラルタルの全妹ルビーの産駒であるフィエロは母の父がデインヒル。英、愛の2000ギニーなどG17連勝を記録した名マイラーのおいなのだから、G1レベルでも血統的な格負けはない。

 ヴァンセンヌの母フラワーパークは高松宮杯とスプリンターズSに勝った96年のJRA賞最優秀短距離馬。その父ニホンピロウイナーは85年の優勝馬で、父としても92、93年とG1格付け後初の連覇を果たしたヤマニンゼファーを出した。“ミスター安田記念”ともいうべき前世紀の名馬の血脈と、最先端のチャンピオンサイヤーの遭遇がミスマッチ的な効果を生み出すかもしれない。 (サラブレッド血統センター)

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