藤井正弘の血統トピック

【エンプレス杯】強運一族ハルサンサンが怖い

[ 2012年2月29日 06:00 ]

 29日に川崎競馬場で伝統の古牝馬重賞、第58回エンプレス杯が行われる。JBCレディスクラシックの覇者ミラクルレジェンド、「川崎2100メートル血統」として名高いクロフネ産駒パールシャドウなどのJRA勢を船橋の4歳2騎が迎撃するという構図。馬券的にも面白い一戦だ。

 血統面からはハルサンサンに注目している。5代母ワカクモは1966の桜花賞馬。77年の年度代表馬テンポイント、82年の最優秀障害馬キングスポイントの母でもある。直子の牡馬2頭は現役中に悲運の死を遂げたが、牝駒のオキワカがきさらぎ賞勝ちのワカテンザン、中央で朝日チャレンジCに勝った後、東海で無敵の強さを発揮したワカオライデン、国内外で重賞5勝のフジヤマケンザンの母となったワカスズランを産むなど、代を経ても朽ちない活力を実証してみせた。

 ハルサンサンは母の父が5代母の孫、つまり3代母ダスシェーネのいとこでもある前記ワカオライデン。つまり偉大な牝祖ワカクモのリメーク(4×5)という極めて意匠的な近交馬なのである。伝貧感染の濡れぎぬで殺処分寸前だったところをオーナーの機転によって救われ、法廷闘争の末に繁殖登録を勝ち取ったという6代母(ワカクモの母)クモワカのエピソードは、日本の血統史における伝説の1つ。文字通りの死線をくぐり抜けてきた悲運にして強運の一族である。前走のTCK女王盃を地の利で片付けるのは危険だろう。(サラブレッド血統センター)

続きを表示

バックナンバー

もっと見る