五木ひろし 紅白連続50回出場で区切りの背景

[ 2021年10月18日 05:30 ]

五木ひろしがトリ務めた「第55回NHK紅白歌合戦」
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 演歌歌手の五木ひろし(73)が、今年の大みそかの「第72回NHK紅白歌合戦」(後7・30)に出場しないことが17日、分かった。1971年に初出場して以来、記録していた50回連続出場は歴代最多だった。13年の北島三郎(85)、15年の森進一(73)に続き、演歌界の大物がまた一人、紅白の舞台を去ることになった。

 美空ひばりさん、北島に次ぐ歴代3位タイの大トリ通算6回を誇る大御所に、NHKが断を下した。五木は昨年の紅白で北島と並ぶ最多タイの50回出場を記録。それを区切りに大舞台を去ることになった。

 北島は最後の紅白となった13年に紅組、白組の垣根を越えた“究極の大トリ”という花道を用意された。しかし今回は五木の歌唱もセレモニーもなく、ひっそりと紅白から消えていく形となる。半世紀にわたり出場を続けた功労者にしては寂しすぎる別れだ。

 NHKは数日前、五木サイドに今年の出場がないことを正式に通達。五木はこの日、大阪・新歌舞伎座で行われたコンサートで「昨年をもって紅白を終了いたします」と「落選」や「辞退」の表現を避けてファンに直接報告した。

 不出場の背景にはNHKの強い意向があった。関係者によると、若返り路線を加速させるため、数年前から五木の引き際を模索。「出場回数で北島と肩を並べたことを区切りとしてもらう意向を固めた」(同関係者)。

 五木は昨年「山河」を歌唱。当日に「私にとっても大きな区切りとして、万感の思いを込めて歌います」とコメントした。自然に解釈すれば50年の区切りという意味だが、当日に白組司会の大泉洋(48)が「“区切り”というとても重い言葉をおっしゃった五木さん」と曲紹介。この紹介に、局の意向がにじんでいた。

 今回の「五木外し」は、一人の大御所歌手だけの問題ではなく、紅白における演歌というジャンル自体が大きな岐路に立たされたことを意味する。

 五木が姿を消すことで、白組では氷川きよし(44)が演歌勢の最年長に。その氷川はここ数年、演歌という枠組みにとらわれないスタイルを追求しており、三山ひろし(41)や山内惠介(38)ら、数少ない若手で担うことになる。一方の紅組は石川さゆり(63)、天童よしみ(67)、坂本冬美(54)ら大御所クラスが残る一方、若手演歌歌手は入れ替わりが続いて定着せず、紅組と白組のバランスがいびつになる。

 時代とともに姿を変えてきた紅白の中で、半世紀にわたり一定の役割を果たしてきた五木が不在となることに、音楽事務所の関係者は「北島さん卒業以来の“地殻変動”。今後数年で、紅白がまた大きく姿を変える呼び水になる可能性も大いにある」と指摘する。

 卒業を公言して最後の舞台を踏んだ北島や森と違い、功績を称えられることもなく紅白を去る五木。NHKの演歌に対する敬意や姿勢が問われそうだ。

 ◇五木 ひろし(いつき・ひろし)本名松山数夫(まつやま・かずお)。1948年(昭23)3月14日生まれ、福井県出身の73歳。64年に「コロムビア全国歌謡コンクール」で優勝しデビュー。改名を重ね、71年に五木ひろし名義で初めて発表した「よこはま・たそがれ」がヒット。代表曲に「長良川艶歌」「そして…めぐり逢い」など。芸術選奨文部科学大臣賞(04年)、紫綬褒章(07年)、旭日小綬章(18年)などを受章。

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