渡辺明新名人「少しずつ実感」初奪取から一夜

[ 2020年8月16日 12:16 ]

歴代永世名人の掛け軸が掲げられた関西将棋会館「御上段(おんじょうだん)の間」で一夜明けの会見に臨んだ渡辺明新名人
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 15日の第78期名人戦7番勝負第6局で豊島将之名人(30)を破り、4勝2敗で名人位を初めて奪取した渡辺明新名人(36)=王将、棋王との3冠=が一夜明けた16日、大阪・関西将棋会館で会見した。対局後はいつも眠れないため、知人から届く祝福メールなどへの返信に追われて午前4時まで起きていたと振り返り、「連絡をもらったり、返事を出したりする間に少しずつ実感が出てきた」と名人奪取への手応えを語った。

 コロナ禍による中断期間を経た6月以降、棋聖を藤井聡太棋聖に奪われたが名人は奪取した。自己最多タイの3冠は維持し、年内に出場するタイトル戦は終了した。年明けからの第70期王将戦7番勝負(本社主催)が当面見据えるタイトル戦となる。

 「1月から始まるのでそれへの準備をしつつ、休みを取りたい」。今後の見通しを語ると共に、将来名人として迎え撃つ可能性がある藤井について「そうなったらそうなったで反響は大きい。やりがいはあるけれど厳しい勝負にもなる。棋聖戦で両面思った」と語った。藤井は現在B級2組。B級1組、A級と順調に昇級を重ねても名人挑戦は最短で2023年になる。

 会見では日々存在感を増すAIについても触れた。AIの進化で将棋の技術革新も日進月歩。第一人者のポジションを長年維持する渡辺でも同様で、「以前は対局日だけでも何とかなったが今はやることが多くて。対局が立て込んだときのキツさが違う」。40代での活躍を見据えた現在の課題として挙げ、谷川浩司九段が棋士をその著書で分類した「勝負師」「研究者」「芸術家」について、研究者の領域が日々増していると告白し「研究量を求められることはこれから先も変わらない」と覚悟を示した。

 前夜、ホテルへ戻ってテレビを付けると驚きのニュースが飛び込んできた。昨年は対局の合間を縫って10回球場へ通ったヤクルトファン。そのエース小川が達成したノーヒットノーランに「相手(先発)が今永でキツいと思っていた。普段なら録画して頭から見たりするが、そういう意味で興奮を感じ損ねたところはある」。コロナ禍もあり球場へ出向くことは今季なさそうだが、「競馬とかサッカー、野球を(テレビで)見たりとか趣味の時間に充てたい」と待望のオフへと思いをはせた。

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2020年8月16日のニュース