球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

トーリ前ヤンキース監督を“対話の名人”にした幼少期の経験

[ 2014年8月24日 05:30 ]

 ヤンキース前監督のジョー・トーリ氏の背番号「6」の引退式が24日(日本時間25日)にヤンキースタジアムで行われる。指揮した12年間でチームは12回連続でポストシーズンに進出し、4度のワールドチャンピオン。当然の永久欠番だ。

 トーリ氏に初めて話を聞いたのは1974年秋。巨人・長嶋茂雄が引退し、日本全国で18試合やる「さよならツアー」の日米野球でメッツの一員として来日した時だ。日本出発直前にカージナルスからメ軍にトレードされたため、トーリ氏はそのシーズン、メ軍で1試合もプレーをしていない。「メッツは打線が弱い。大リーグの強打者として参加を、と頼まれた。強打者はともかく、日本野球に興味があってね」。日本では全試合に出場し、打率4割超、5本塁打、18打点を挙げた。カ軍では主将だった。「(カ軍の前に在籍した)ブレーブス出身の私の(主将)抜てきには驚いた。捕手なので投手の話はよく聞いたがリーダーシップには自信がなかった。カ軍が私の隠れた才能を見抜いてくれた」

 家庭内暴力で悩む子供を助ける活動に長年力を入れている。警官の父が家で拳銃を持ち出して母に暴力を振るう家庭で育ったためだ。「妻が娘を妊娠した20年前、あるセミナーに誘われた。そこでは酒やたばこや薬物の悩み、家庭内暴力などを抱えた人たちが語り合う集いだった。私はそこで泣きながら父の暴力を恐れて暮らした子供時代を初対面の人たちに話した。長年心にわだかまっていた何かが吹っ切れた…」

 永久欠番セレモニーを前にしたニューヨーク・タイムズ紙のインタビューの一節、選手との対話の名人となる背景だ。つたない質問に辛抱強く耳を傾け、静かに話してくれた後楽園ベンチでの姿を思い出した。 (野次馬)

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