球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

「薬物汚染に目をつぶった」コミッショナーの見返す時

[ 2013年8月4日 06:00 ]

 「今季残り試合と来季全試合の出場停止、受け入れないなら永久追放も」。バド・セリグ・コミッショナーの意向で大リーグ機構(MLB)は、ヤンキースのアレックス・ロドリゲス(Aロッド)の弁護団にそう迫ったという。激論1週間、処分発表は週明けに持ち越された。

 今は閉鎖されたフロリダの診療所から不法薬物が複数選手に供給されていた。調査を開始したMLBは、診療所経営者に「協力するか訴訟攻めになるかだ」と圧力をかけた。協力を約束した「薬物配給所のボス」から得た証拠を抱えてMLBは容疑選手に面談した。

 処分第1号でコミッショナーの強い姿勢を知らせる必要がある。MLBは、MVPとなった2年前、陽性判定を検査官のミスに責任転嫁し、ウソを並べ50試合出場停止から逃れたブルワーズのライアン・ブラウンを選んだ。ブラウンは65試合出場停止を黙って受け入れた。流れは決まった。

 Aロッド以外の8選手が50試合の出場停止を受け入れたという。今季残り試合で刑期満了、来季クリーンな出直し、これがMLBの筋書きだ。

 Aロッドの停止試合が多いのは薬物使用に加え、他の選手の勧誘、調査妨害もあり悪質、「薬物規定」違反ではなく「労使協約」違反を適用すべきとのコミッショナーの考えから、と報じられている。「永久追放」となると調停や裁判で争うのは難しく、覆すにはコミッショナーとの直談判だ。「Aロッドをファウルラインの間に入れるな」というコミッショナーの姿勢は崩せないだろう。

 大リーグを巨大な娯楽産業に育てたセリグ・コミッショナーの21年は薬物汚染と重なる。「金もうけ優先で薬物汚染に目をつぶった」との汚名を晴らす大勝負。引退は来年末だ。 (野次馬)

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