球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

ビデオ判定、処分公表…権威が揺らぐ審判員

[ 2013年5月19日 06:00 ]

 今季の退場者は34人、試合がある1日あたり約1人のペースは例年並みで、昨季は計178人が退場になった。審判員は強い、と言いたいが、実は弱者になりつつある。

 かつては権威を保つため非公開だったMLB(機構)の審判員処分が近年公表され始めた。「内部処分で済ませる保護政策が審判員をごう慢にし、技術をおろそかにさせた」との非難に機構が耐えられなくなったのだ。

 今季は2試合出場停止の審判員が1人、罰金が4人。出場停止は交代投手が1球も投げないうちにルール違反の交代を認めた責任審判員。罰金がこの試合の残り3審判全員に科せられ、もう1人は試合後に投手ともめた球審だ。本塁打をビデオ判定で確認後も二塁打にした審判団を「二重の誤審」と認めながら、処分しなかった機構の責任者ジョー・トーリ理事もメディアに非難された。

 そんな中で昨季ナ・リーグ新人王、ナショナルズのブライス・ハーパーを第1打席で退場させたジョン・ハーシュベック審判員がコラムで褒められた。三振判定に両手を上げたハーパーに警告、バットを叩きつけるとまた警告、ヘルメットを投げたところで「退場宣告」。3度も念を入れた審判歴29年のベテランはフェア、というのだ。

 機構は来季からビデオ判定の範囲を拡大したい考えだ。「野球で大切なのは事実ではなく審判員の判定」の大原則は揺らぎ、審判員の権威を見せる問答無用の「退場宣告」も苦しくなる一方。それでも、退場ペースを落とさないのは審判員の意地なのか…。とにかく強い審判でなくては面白くない。

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