【新春対談 阪神・岡田監督×赤星憲広氏(3)】連覇へ「何をすべきか、選手はだいぶんわかっているよ」

[ 2024年1月3日 05:15 ]

赤星氏(左)と対談する阪神・岡田監督(撮影・須田 麻祐子)
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  (2)から続く。

 赤星 湯浅は、去年は悔しい一年になりましたね。

 岡田 湯浅は、今年の新戦力と思っているよ。去年の貢献度はゼロやと思っているよ。はっきり言うて。日本シリーズで投げたけどな。でも、あいつで負けた交流戦の方が大きいで(※12)。だから、今年、新戦力で一番計算できるのは湯浅じゃないか。

 赤星 守護神として期待できますか?

 岡田 そこまでは期待していないわ。投げてみないと、わからへんよ。ただ、どっちかというたら、イケイケのタイプだから、後ろは怖いと思うよ。岩崎みたいな繊細さはないよな。何でもかんでも(勝負に)いってしまうのはな。

 赤星 好調時は勢いで良いのですが。

 岡田 だから、ボールの力だけで勝負する投手は怖いよな。コントロール重視じゃなくてな。一番後ろの投手は、絶対に点をやれないポジションだからな。たとえランナーを出しても失点をしないという繊細な気持ちが必要やで。イケイケじゃアカン。怖い。打たれたらアカンというビビる部分がないと、クローザーなんかでけへんよ。全部165キロを投げられるんやったら話は別やけど。

 赤星 ブルペン陣の競争激化が予想されます。

 岡田 外国人選手(投手のビーズリーと新加入のゲラ)も使わなアカンしな。

 赤星 ある意味、ぜいたくですね。

 岡田 そこまで期待せんでもええで。俺は外国人選手なしでやってもええで。そうしたら、もっとウチは強くなるよ。

 赤星 近年は、来日する選手のレベルがそこまで高くないですよね。来日前の3Aの成績がアテにならないです。

 岡田 映像を見ていても、いい選手はそんなにいないよ。

 赤星 監督が最初(04年)に監督をした頃は、もっといたはずですよね。

 岡田 まだおったよな。今の外国人選手は、日本人選手でカバーできるレベルやで。はっきり言うて。(打率)2割6~7分で(本塁打)20本やったら、(同じ力量の)日本人選手を育てられる。それでは、助っ人にはならんよ。日本でいきなり30本を打てる外国人選手は、今はいないよ。メジャーのレベルも落ちているんちゃう?スーパースターは凄いけど、その下のランクは落ちているんちゃうか?3Aとかなら、日本の野球の方が全然、レベルが上やわ。

 赤星 それにしても監督はミエセスのことが好きですね。

 岡田 うん。(ベンチに)置いていてもマイナスじゃないから。チームに溶け込む姿がええよな。まあ、ミエちゃんは何の戦力か、わからへんけどな(笑い)。試合の戦力にはなっていないわ。

 赤星 昨春のキャンプではなじめるかどうか心配しましたが、ムードメーカーになりましたね。

 岡田 (年俸が)安いもん。ノイジーの半分(※13)やんか。半分、半分。ノイジーはイジりにくい。真面目すぎて、イジる対象にならんわ。(優勝旅行先の)ハワイには、ノイジーのオヤジも来ていたな。タイガースの帽子をかぶってあいさつに来てくれたわ。ノイジーも溶け込もうとしているんやろな。昔の外国人選手は、グラウンドで数字を残してくれたら、それだけで良かったけど、今は数字を残されへんから、チームに溶け込まんとな。

 赤星 去年を少し振り返りましょう。監督復帰1年目で、目指す野球がここまで浸透すると思いましたか?

 岡田 いや、思っていない。8月のロード(※14)でちょっと勝ってからは、ミーティングで何にも言っていないよ。それまでは昨日の、あのプレーはこうしたらいいんじゃないかということを、ミーティングの最後に話したけどな。言うたのは、日本シリーズの1戦目ぐらいかな。(当時オリックスの)山本はたいしたことないと言ったよ。低めの真っすぐだけを狙おうと。(捕手の)若月を見ててみ。ずっと低めばかり構えとるでと。だから第6戦、若月は高めに構えとったな。

 赤星 選手からは監督と直接、話しをする機会は少ないと聞きます。

 岡田 いやいや、前(第1次政権時)に比べたらだいぶんしゃべっているで(笑い)。去年に関しては、選手も聞きに来たしな。青柳にしても、大竹にしても。

 赤星 今の選手からすると監督との会話は少ないかもしれませんが、以前を知る僕から見るとコミュニケーションを取っています。選手の個性を把握するためでしょうか?

 岡田 まあ、どういう考えで野球をしているか、やっぱりわからへんもん。評論家時代に感じたのは、今の選手はチームの勝ち負けよりも、自分の中で淡々と野球をしているような感覚を受けた。チームのために自分が犠牲になって勝とうとしている姿が、あまり見えなかったもんな。打ったら勝つ、打たなかったら負ける。そういう、わかりやすい勝敗が多かったよな。

 赤星 でも、そういう選手ばかりではないことが、去年の1年間でわかったのですか?

 岡田 そうそう。そういう(チームのことを考えている)選手の方が多かったよ。チームが勝つために、守備位置や打順を固めて、役割分担を明確にして、自分が何をすべきかということを、1年間やって、選手はだいぶんわかっているよ。去年は、最後(日本シリーズ)にちょっと負けておけば、今年の目標ができたのかもしれないけどな(笑い)。日本一以上の成果はないからな。まあ、まずは連覇が目標になってくるだろうな。

 =この稿終わり=

(※12)23年6月8日の楽天戦で1点優勢の9回に逆転サヨナラ3ランを被弾。同15日のオリックス戦でも1点優勢の9回に頓宮と杉本にソロを浴びて敗戦投手。

(※13)ノイジーは推定110万ドル(約1億6170万円)、ミエセスは推定50万ドル(約7350万円)。契約更新時の1ドル=147円で換算。

(※14)甲子園を離れての長期ロードは18勝5敗。期間中の8月3日から13日にかけて球団16年ぶりの10連勝。8月16日に優勝マジック29が初点灯。

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