杉谷拳士さん 17年前の夏の甲子園“伝説の死闘”舞台裏 あの1球後「前田監督がものすごい形相で…」

[ 2023年8月10日 17:58 ]

杉谷拳士氏
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 昨季限りで現役を引退した元日本ハム内野手の杉谷拳士さん(32)が9日深夜放送のテレビ朝日「杉谷拳士が取材中」(水曜深夜2・47)で、2006年夏の甲子園準々決勝での“忘れられない1球”について語った。

 名門・帝京で1年生ながらベンチ入りした杉谷は、智弁和歌山との準々決勝に「8番・遊撃」でスタメン出場。帝京は4―8で迎えた9回に2死から3点を返して1点差に迫ると、なお2死満塁から杉谷が左前2点打を放って逆転に成功。その後3ランが飛び出してこの回一挙8点を挙げ、12―8とリードを奪った。監督だった前田三夫氏の「ここで負けたら3年間終わりですよ!」というゲキに応えた逆転打。1年生だった杉谷は「えっ?3年間終わりなの?」と驚きつつも「絶対打ってやろう」との思いでボールに食らいついたという。

 そして迎えた9回裏。直前の代打策の影響でマウンドに上がったのは東東京大会で登板機会のなかった選手。智弁和歌山の4番・橋本に3ランを浴びて1点差とされると、遊撃の杉谷に前田監督から「1年坊!肩回せ!」と声が掛かった。そして無死一塁から杉谷が登板。中学時代は投手だったが、高校では公式戦登板もないまま度胸を買われて上がった聖地のマウンド。それでも投球練習では「1球投げるたびにスピードガンを見たらうれしくて。130キロ?意外に俺投げれる!」と余裕があったという。

 捕手との打ち合わせでは「ストレート、スライダー、スプリット」を投げられると伝えた杉谷。だが、いざ1球目を投げようとサインを見ると、出たのはカーブの指示。「変化球はスライダーとスプリットしか投げられないと言ったのに。でもスライダー気味のカーブってことかと思いながら投げた。そしたらピューン!!とボールが抜けて」痛恨の死球を与えてしまった。

 「前田監督を見たらものすごい形相で怒ってるんですよ。“戻れー!”って」とわずか1球で降板。その後も智弁和歌山に傾きかけた流れは止まらず、6番手投手が同点打を打たれ最後は押し出し四球。9回に5点を奪われて12―13で逆転サヨナラ負けを喫した。

 歴史に残る壮絶な死闘で、杉谷は“1球敗戦投手”に。番組にゲスト出演した、対戦相手・智弁和歌山の4番で元阪神捕手・橋本良平さんは「あのデッドボールから完全にエンジン全開になった」と回顧。杉谷はそれでも「あれがあったからこそ野球に取り組む姿勢が変わった。1球の大切さ、自分の野球観が変わった試合だった」と振り返っていた。

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