来月5日選手会で「マイナーリーグFA」議論 1軍出場恵まれない30歳前後の選手に移籍チャンス

[ 2022年11月30日 05:13 ]

選手会が描く移籍システムのターゲット層
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 日本プロ野球選手会(労組・会沢翼会長=広島)が、日本野球機構(NPB)に対し、「マイナーリーグフリーエージェント制(以降マイナーFA・仮称)」導入を含めた移籍制度の全体的改革の提案を検討していることが29日、分かった。戦力均衡を目的とした移籍市場の活性化を目指す改革案の一部で、大リーグの同名制度をモデルとしたもの。FA権取得期間の短縮、現役ドラフトの拡充とともに来月5日の選手会定期大会で議論する。

 マイナーFAは大リーグで導入されており、マイナー所属が7シーズン以上で40人枠を外れている選手に適用される。日本で導入する場合は球団在籍年数や2軍での出場試合数などが適用条件に想定されるが、選手会側は「設定は大事になる」と今後も検討を重ねていく方針だ。

 選手会の森忠仁事務局長は「それぞれのレベルで移籍市場を活性化させる制度が必要。マイナーリーグFAはその一つの手段」と説明した。現状の移籍制度は(1)トレード、(2)FA権の行使、来月9日に初めて実施される(3)現役ドラフト制度がある。FA権はトップ選手、現役ドラフトは主に1軍と2軍の中間層の選手が中心となることが予定されているが、現状ではいずれも限られた選手しか対象にならない。そこから漏れる選手がマイナーFAのターゲットで、キャリア全盛期ながら1軍出場機会に恵まれない30歳前後の選手に主体的な移籍のチャンスが生まれる。

 森事務局長は「余剰戦力を保険で押さえるのではなく、12球団で共有してほしい」と訴えた。背景にあるのは近年の育成制度の乱用だ。今季も巨人で梶谷ら11選手が支配下から育成枠に変更となった。制度本来の目的と異なった使い方が、球団が契約権利を持つ保留選手数だけを不要に膨れ上げさせて、12球団の戦力公平性を損ねていると指摘する。

 「一方的に選手が有利になることを求めているのではない。球界全体のことを考えて制度をつくりましょうと伝えている」と森事務局長。日本球界にはまだ移籍をネガティブに捉える向きもある。自身も阪神でプレー経験がある森事務局長は「選手には健全な競争の上で悔いのない現役生活を送ってほしい」と訴え、来月5日の選手会定期大会で各現役選手からの意見も募って議論を進める方針だ。

 《MLBではマイナーリーグ7シーズン経験選手に適用》現在の大リーグのマイナーFAは、登録日数や試合数など問わず、マイナーリーグを7シーズン経験した選手に適用される。メジャー40人枠に入っていなければ、ワールドシリーズ最終戦から5日後に自動的にFAとなる。一時的にマイナー降格したシーズンなども含み、マイナーの負傷者リストに入っていてもカウントされる。

 今秋日本ハムにドラフト3位指名された加藤豪は、ヤンキース傘下マイナー7年目の19年シーズン後にマイナーFAとなり、マーリンズとマイナー契約した。メジャー通算61本塁打のレイズ・崔志萬(チェジマン)は、15年オフにマイナーFAとなると、10球団がマイナー契約をオファー。その後才能を開花させた。今季西武でプレーしたオグレディは20年オフにマイナーFA後、パドレスからメジャー契約を提示された。

 大リーグでは移籍手段が数多くあり、メジャーでは6シーズン(172日以上登録)経験で自動的にFAになる。それ以前に調停での見込み年俸額と実力が見合わず契約保留権を放棄される「ノンテンダーFA」も多い。また現役ドラフトのモデルにもなった、入団から一定年数経過した40人枠外の選手を獲得するルール5ドラフトもある。トレードも交換要員を後日指名するケースや、ドラフト指名権などとの交換など、手段がさまざまで選手の流動性が高い。

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