【内田雅也の追球】しばらくは辛抱の日々 敬意をもって昨年のヤクルトをみならい、やり返したい

[ 2022年3月27日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神0ー6ヤクルト ( 2022年3月26日    京セラD )

<神・ヤ(2)> 6回無死、中野は高橋の打球を一塁に送球するも内野安打になる (撮影・平嶋 理子)
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 1年前を思い返している。阪神は敵地・神宮で開幕を迎え、ヤクルトに3連勝した。その勢いのまま首位を快走した。だが、戦力を整え迫ってきたヤクルトに逆転で優勝をさらわれたのだ。

 ヤクルトは立派であった。開幕当初は新外国人のドミンゴ・サンタナ、ホセ・オスナが不在。若い奥川恭伸、高橋奎二らの投手陣も無理使いはせずに成長を待った。戦力整備をしながら、浮上をうかがっていたのだ。

 今年は立場が入れ替わった。本拠地開幕で昨年と同じ相手に連敗した。日本一と声高に宣言して迎えた開幕だが、まだまだ戦力は整っていない。

 開幕投手に指名した青柳晃洋がコロナ陽性で戦列を離れ、及川雅貴、岩貞祐太、ラウル・アルカンタラ、高橋遥人…らが故障や故障明けで1軍にいない。

 もちろん小川一平はよく投げた。だが開幕2戦目にプロ初先発の小川を起用しなくてはならない現状に苦しさが見える。救援陣はリードした展開での必勝継投を探っている状態だ。同点で送り出す投手も誰にするのか、もっと手探りだろう。

 だから0―0投手戦から致命的な4点を失った6回表も継投策以前の問題だった。小川は何とか2死満塁までこぎつけたが、サンタナに2点打を浴びて降板となった。

 球威が落ちていたのは明らかだった。スピードガン表示ばかりが目安ではないが、前の5回表から150キロは出ていなかった。100球に近づき限界は見えていた。それでもベンチは祈るしかなかったのである。

 無念に思ったのは、この回先頭の投手・高橋の疾走で許した遊ゴロ内野安打と、青木宣親に二塁右をゴロで破られた右前打だった。中野拓夢、糸原健斗は精いっぱいに見えたが、やはりアウトにするのは無理だったか。

 打線は2安打。佐藤輝明が見極めていたインハイ速球に空振りとどん詰まりを繰り返し、選球眼のいいジェフリー・マルテがボール球に手を出しているのが気にかかる。

 しばらくは辛抱の日々となる。悔しかろうが、敬意をもって昨年のヤクルトをみならい、やり返したい。長いシーズンを見通し、腰を据えて陣容を整備する。最後のシーズンと腹をくくった監督・矢野燿大の覚悟を信じたい。 =敬称略=
 (編集委員)

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2022年3月27日のニュース