マウンドの気迫に圧倒され、お立ち台の姿に癒された復活劇 高橋の実像を解くカギは若手選手の「遥人評」に

[ 2021年9月19日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神1ー0中日 ( 2021年9月18日    甲子園 )

<神・中(17)>今季初勝利を挙げ、スタンドのファンに手を振る阪神・高橋(撮影・北條 貴史)
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 【畑野理之 理論】本当に、いい試合だった。どっちが勝つのかな…を超えて、どちらが先に点を取られるのだろうと、甲子園のスタンドは敵味方なく見入っていた。阪神・高橋遥人と中日・大野雄大のまさに息詰まる投手戦だった。

 言葉では平然としていても、胸の内では意地を張り合っているように見えた。先に失点はしたくない。先に降板してたまるか。確かに実際に勝負しているのは相手打線なのだが、「負けないですよ」、「やるやないか」の“パンチ”の打ち合いが、マウンド上では行われていたはずだ。

 4回1死一、三塁で大山悠輔を一邪飛、メル・ロハス・ジュニアをどん詰まりの二飛で打ち取り無失点で脱出した大野雄は、正直、ニクたらしいほどカッコよかった。プレーボールからの展開を見ていれば、「1点」が致命傷になる可能性が高いのを2人はわかっていた。そして、その通りの1―0での決着だった。

 ――と、ここまで闘志むき出しのファイターのように書いたが、高橋の方は全然そんなキャラではない。かわいいマスクで、しゃべりも、のほほ~んとしている。お立ち台でも糸原健斗の決勝打について「ナイスバッティングと思って」と話したところでファンはクスクス。「でも、そこでちょっと笑顔見せたら、次…。集中しなきゃなと思ったんで、また気が引き締まりました」と続け、何だか癒やされてしまった。

 この日、2軍の中日戦が中止となり、ナゴヤ球場で汗を流した若手たちからの遥人評が面白い。

 ▼村上頌樹 「バケモンですよ。“俺はもうアカン”ばっかり言うてたのに。遥人さんに教えてもらったツーシームを、自分が“めっちゃ、いい”って言いまくってたらチームに広がっています」

 ▼栄枝裕貴 「僕が調子いいですねと言ってもいつも“全然だよ。こんなんで1軍は抑えられないよ”って返すんですよ。受けている方からしたらメチャメチャいいと思うんですけど、僕は(新人なので)全盛期を知らないから、もっとすごいのがあるのかなと思っています(笑い)」

 ▼岩田将貴 「おちゃめな方です。お風呂で30分くらい熱い野球の話をして、僕にとっては貴重な時間だったんですが、終わった時に“野球の話しすぎた、ごめん”って言うんですよ」

 今季の初勝利は、チームの連敗も止める大きな1勝となった。それでも、謙虚で、後輩からもこのように慕われ、イジられる高橋は「いやいや、まだまだ僕なんか…」って、きっと言うのだろうな。
 =敬称略= (専門委員)

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2021年9月19日のニュース