【和歌山】“皆勤校”桐蔭 激闘に散る 甲子園開会式に招待の主将「全員で行きたかった」

[ 2018年7月23日 17:10 ]

第100回全国高校野球選手権記念和歌山大会 準々決勝   紀北工12―11桐蔭 ( 2018年7月23日    紀三井寺 )

敗戦後、応援団から最後のエールを送られる桐蔭の選手たち(23日、紀三井寺球場)
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 3点を追った9回裏の攻撃前、桐蔭の主将、坂本雄冴(3年)は円陣で「焦らずいこう」と声をかけた。凡飛3本に終わった8回裏の攻撃に「焦り」を感じたからだ。「あわてず、落ち着いて攻撃すれば大丈夫や」と励ました。

 坂本の言葉に応えるように、打線は粘りを見せた。2死二、三塁から3番・水谷優太(2年)、4番・池谷涼(3年)の連打で2点を返し1点差。さらに坂上昴汰(3年)も三塁内野安打で満塁とし、一打同点、いや逆転サヨナラまで追い上げた。最後は一ゴロで届かず、11―12という激闘の末、敗れた。

 敗戦後、伊藤将監督(38)は「すべて僕の責任です」と声を絞り出した。「1年生を投げさせた僕が悪いんです。3年生たちに申し訳ない……」

 先発に起用した右腕・竹田健人(1年)が乱調。さらに9―7と2点リードの7回表には左腕・坂口健心(1年)を3番手で起用したが、四球連発でバントの1死しか奪えず、同点を許した。

 9―9同点の2死一、三塁、カウント2ボール―1ストライクから、4番手で登板した背番号「1」の坂上も暴投で勝ち越しを許し、適時打も浴びた。

 右翼を守っていた坂上は「ピッチングはできず、キャッチボールだけだった」と、緊急登板だった。「でも、普段から準備の球数は少なくてすむ方だし、結局僕も点を取られましたので……」。言い訳はしなかった。

 敗戦後、涙にくれる坂本は「悔しい……。悔しいだけです」と目を赤くはらしていた。外野の控え選手で背番号は10。試合に出たかったか?との問いかけに「それはもちろん」と言った後、「でも出ていた選手たちは自分以上に集中力を持ってプレーしてくれていた」と奮闘をねぎらった。

 旧制・和歌山中で創部は1897(明治12)年。夏の大会(予選)には1915(大正4)年の第1回大会から一度も休まずに出場し続ける“皆勤15校”の1校。100回大会を記念して、開会式に15校主将が招待されている。

 桐蔭では坂本が入場行進する。「全員で行きたかった……。自分一人になりましたが、チームメートや先輩の方々の思いもあります。名誉なことなので、堂々と歩いてこようと思います」

 試合後、近年恒例となった球場外での応援団へのお礼のあいさつで、坂本は「悔しいです……」とまた涙がこぼれた。「最後まで強い桐蔭を見せてくれて、ありがとうございました」と団長があいさつした。チアガールの面々も涙を浮かべながら、最後のエールを送った。

   (内田 雅也)

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