阪神よ、不運を不運と思うな 苦しい時間が君を成長させる

[ 2016年7月21日 10:30 ]

<神・巨>3回裏無死一、二塁、原口は二塁併殺打に倒れる(一塁手・阿部)

セ・リーグ 阪神2-6巨人

(7月20日 甲子園)
 【内田雅也の追球】阪神の敗因は依然として決定打を欠く打線である。5回まで3併殺8残塁と前半の拙攻が響いたのは明らかである。

 敗戦後、打撃コーチ・片岡篤史も「いつも言っているが」と前置きし、「前半に1本出ていれば……というところで出ないと、こういう展開になる」と話した。

 なかでも3―5回裏と3イニング続けて食らった好機での併殺である。3本とも快打だったが、野手の正面を突いた。

 3回裏は連続四球の無死一、二塁で原口文仁が二ゴロ併殺打に倒れた。4回裏は1死一、二塁で大和のライナーが一塁正面に飛び併殺となった。5回裏は1死満塁で北條史也の強烈なゴロは三塁正面を突き5―4―3の併殺となった。

 確かに、不運である。

 ただし、不運と思わぬことである。

 野球への愛を感じる作家、伊集院静が近著の、その名も『不運と思うな。』(講談社)で、松井秀喜や武豊が重傷を負っても「不運」と口にしない姿勢をたたえ、その理由を書いている。<それは己を不運と考えた瞬間から、生きる力が停滞するからではなかろうか>。

 不運を嘆くばかりでは何の解決にもならない。それは阪神の首脳陣も選手も分かっている。

 通路で立ち止まった片岡に、あえて「ツキがなかった」と問い掛けてみた。すると、期待した通りの答えが返ってきた。「ツキがない……だけですませてしまってはいけません」

 原口が初球の高めスライダーを打った二ゴロ併殺打も「打つ球は間違えてないが、いつもの思い切りがなかった」。2ボールからやや低め直球を三ゴロ併殺打した北條は「力みすぎ」。いずれも安打コースに飛ばなかった原因をみていた。ツキがない、だけで終わらせない姿勢が見える。

 この日は多くの小中学校で1学期の終業式があった。甲子園のスタンドに、多くの少年少女が詰め掛けていた。

 成績や順位はさておきたい。夏休みを迎えた子どもたちに、夢や希望を与えるプレーを見せようではないか。そのためには<生きる力>を出すのである。

 先の書で伊集院は辛くい、苦しい、哀(かな)しい目に遭う若者に向けて言葉を贈っている。<決して不運と思うなよ。(中略)その苦しい時間が必ず君を成長させる>と結んでいる。 =敬称略=(スポニチ編集委員)

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