さすが宇宙人!?井納、防御率4点台でもトップタイ6勝

[ 2014年5月17日 05:30 ]

<神・D>ファンの声援に笑顔で応える井納

セ・リーグ DeNA3―1阪神

(5月16日 甲子園)
 今季2度目の完投を逃した悔しさが行動に出た。3―1の9回1死一、二塁のピンチで無念の降板となったDeNA・井納は、握りしめた球を一塁ベンチへ叩きつけた。

 「自分が最後まで投げなきゃいけない。9回途中までいったけど…」

 本人が心の底から喜べなかったように、中畑監督もあえて注文をつけた。「完投してほしかった。エースだから感じてほしい」。その言葉は期待の大きさの表れだった。それでも8回1/3を6安打1失点。防御率4点台ながら、ルーキーだった昨季の5勝を上回る6勝目は、巨人・菅野に並ぶ堂々のリーグトップタイだ。チームは今季15勝で最下位、総得点155もリーグ最下位という状況の中にあって、井納の奮闘ぶりは際立っている。

 初めての甲子園のマウンド。木更津総合では2年夏に甲子園出場したが、井納はベンチ入りできずスタンドから応援していた。「投げやすかった」という憧れの舞台で、最大の武器であるスプリットがさえた。9奪三振中、5つがスプリット。打撃でも2回に右翼線三塁打を放ち、躍動した。

 1メートル88と恵まれた体格で、ダルビッシュ(レンジャーズ)と同世代の28歳。昨年11月には小久保監督率いる侍ジャパンの台湾遠征にも選出された。今季は食事の量を調整するなど体調管理にも気を配り、91キロをキープしている。昨季は「試合中に食べて、試合後も食べたからどんどん太った」と8月までに体重が87キロから94キロまで増量。体の切れを欠いて2軍に降格したが、3キロ絞った91キロで9月に再昇格してから3勝と結果が出たからだ。「腰がしっかり回転するようになって直球も走るようになった」。直球が走ればスプリットの威力も増す。

 チームの連敗を3で止めた井納。天然ボケのキャラクターで「宇宙人」の異名を取るが本業の野球でも自覚は十分だ。「まだ前半戦。(1年目は)即戦力でできなかった分、今年はしっかりしたい気持ちが強い」。遅咲きの右腕がエースの道を歩みだした。

 ▼DeNA・三上(9回1死一、二塁から救援して5セーブ目)心も体も準備はできていた。

 ▽井納と甲子園 2年生だった03年夏に木更津総合は初出場を果たしたが、井納はベンチに入ることはできなかった。1回戦は金沢(石川)に7―4で勝ったが、2回戦で光星学院(青森、現八戸学院光星)に1―3で敗れた。

 ◆井納 翔一(いのう・しょういち)1986年(昭61)5月1日、東京都生まれの28歳。木更津総合では2年夏の甲子園出場時はベンチ外。上武大では4年時に2季連続で最優秀防御率と、関甲新リーグ優勝に貢献。卒業後はNTT東日本を経て、12年ドラフト3位でDeNA入団。昨年9月28日に球団36年ぶりとなる新人での巨人戦完投勝利を挙げた。1メートル88、91キロ。右投げ右打ち。

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