WBC原監督も棚上げ…一本化しようとしていた矢先だった

[ 2012年7月21日 06:00 ]

囲み取材を受ける巨人・原監督

選手会 WBC不参加表明

 選手会のWBC不参加表明を受け、加藤良三コミッショナーはオールスター第1戦が行われた京セラドームで「野球の五輪復活のメドが立たないいま、WBCの価値は金目では換算できない。過去2度のチャンピオンで期待を寄せている日本のファンの夢を無視できない。影響を真剣に考えなければならない」と語った。

 日本プロ野球組織(NPB)・12球団は既に昨年12月のオーナー会議で参加方針を示しており、説得を続ける。8月1日には選手会とあらためて事務折衝の話し合いを持つ予定がある。

 ただ、選手会の強硬な反対姿勢で、球界が混乱に陥ったのは確かだ。選手会発表を受け12球団代表者は京セラドーム内で話し合いを持った。中日・佐藤良平球団代表は「日本代表の監督問題もギリギリのところまで期限が迫っている」と言う。来年3月の大会に向け、NPBでは加藤コミッショナーが中心となり、顧問のソフトバンク・王貞治球団会長に助言を仰ぐなど日本代表監督の選考を進めてきた。

 水面下では、前回2009年大会で優勝に導いた巨人・原辰徳監督に一本化しようとしていた矢先だった。6月末には女性問題で恐喝を受け、1億円を支払った事実が表面化したが、前回大会で選手の人心を掌握した信頼感が大きく、球界関係者によると「コミッショナーはずっと原監督を推している」と話していた。イチロー、ダルビッシュら前回出場した大リーガーも、原監督となら気心が知れているとのメリットもある。

 候補には昨年の日本シリーズ優勝監督のソフトバンク・秋山幸二監督らの名前も挙がっていたが、12球団の了承を得て、8月下旬には発表する構想を描いていた。「日本代表・原監督」も棚上げされた格好となった。

 選手関係委員長の広島・鈴木清明球団本部長は「こちらの説明不足があったかもしれない。出る方向に説得したい」。国際関係委員会、侍ジャパンプロジェクト委員会の委員長を務める日本ハム・島田利正球団代表は、「侍ジャパンの価値を高めていく意味でもWBCは大切。国際大会の意義という点で、考え方は共有できる」と話した。選手会は「最終決議」としたが翻意への望みを抱く。

 大リーガーを含めた代表チーム編成の準備もある。時間は迫るが、阪神・四藤慶一郎球団専務は「まだ時間はある」と話した。

 ≪WBC問題の経過≫

 ▼11年7月22日 労組・日本プロ野球選手会は臨時大会を開き、条件交渉の結果次第ではWBC不参加を全会一致で決議。新井貴浩会長(阪神)は「今の不公平な条件のままでは、日本プロ野球の発展のためにも次回は出られない。選手全員の意思です」。

 ▼9月29日 巨人の渡辺恒雄球団会長が「アメリカは少しずうずうしいな。最初から妥協したら駄目。MLBとけんかしても、やめるならやめて、アジア独自の野球をやればいい」と持論を展開。

 ▼10月7日 臨時オーナー会議で日本代表「侍ジャパン」の常設化が決定。

 ▼12年3月10日 東日本大震災復興支援ベースボールマッチ・台湾戦(東京ドーム)に9―2で快勝。常設化された日本代表が初陣を飾った。

 ▼7月9日 プロ野球実行委員会で、難航している日本代表の監督選考期限を8月下旬とする方針を確認。

 ▼同19日 WBCを管轄するMLBインターナショナルが、日本が1次ラウンドでキューバ、中国と同組になると明かす。

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2012年7月21日のニュース