主催者側の言いなりイヤ!選手会がWBC不参加を表明

[ 2012年7月21日 06:00 ]

WBC不参加を表明し、うつむくプロ野球選手会の新井会長

 労働組合・日本プロ野球選手会(新井貴浩会長=阪神)は20日、大阪市内で臨時大会を開き、来年3月の第3回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に参加しないことを全会一致で決めた。日本代表のスポンサー権などの譲渡を大リーグ機構(MLB)などで構成される主催者側に求めていたが、認められなかったことで結論を出した。日本野球機構(NPB)は8月1日に選手会と再協議する意向だが、過去2大会で連覇を達成した「侍ジャパン」が最終的に参加を見送る可能性が出てきた。

 夢の球宴を前に衝撃が走った。正午から大阪市内で行われた労組・日本プロ野球選手会の臨時大会。約2時間後。会見に臨んだ新井会長は「WBCに出場しないということが正式に決定しました」と、苦渋の表情を浮かべながらもき然と前を向いた。そして、「WBCI(大会運営会社であるWBCインク)に要望を伝え、あれから1年、何の返答もなかった」と続けた。

 08年の北京五輪を最後に五輪競技から外れている野球にとって「日の丸」を背負ってアピールする最大の場がWBCといっても過言ではない。その大会にボイコットともいえる強硬姿勢。選手会は大会収益をアマチュアも含めた日本球界へ還元するため、スポンサー権などを日本野球機構(NPB)に譲渡するよう求めてきた。

 一貫して問題視してきたのは、日本からのスポンサー料やグッズのライセンス収入などもすべて大会運営会社に入るWBCの収益構造だ。五輪やサッカーW杯などの国際大会では参加国にスポンサー権が認められ、JFA(日本サッカー協会)などは年間数十億円ものスポンサー収入を得て、代表チームの強化、育成費に充てられている。

 WBCは過去2大会ともに約1800万ドル(当時約16億~20億円)の利益を上げている。総収入の4本柱となるのがチケット、放映権、スポンサー、グッズ収入。選手会によると、前回大会では放映権料の計約3100万ドル(当時のレートで約27億6000万円)のうち、日本が38%を占めた。さらに大会のスポンサー収入の約70%が日本企業からもたらされているという。だが、収益配分は米側の66%に対し、日本はわずかに13%。この比率はもとより、選手会の松原徹事務局長は「(スポンサー料などは)本来、日本が持っているべき権利だ」と語気を強めた。

 不参加という最終決議に大きな影響を与えたのも、主催者側の頭越しの決定だった。第3回大会では従来の1次ラウンドだけでなく2次ラウンドも日本で開催することが内定。現行の収入構造では興行権、チケット収入も主催者に入るため、松原事務局長は「日本頼みではないか」とした。

 NPBも選手会の要求をWBCI側に伝えてきたが、いまだ「ゼロ回答」。NPB側はWBC期間外にも日本代表を常設化することで独自にスポンサーを得て収益を確保するとしているが、選手会が納得するには至らなかった。

 新井会長は「選手も出場したい。ただ5年、10年後を考えれば苦渋の選択をせざるを得ない」。選手会の不参加表明は必ずしも交渉打ち切りを意味するものではない。あくまで大会収益配分の見直しにこだわり、瀬戸際で「不参加」という最終カードを切った。

 ▽WBC(ワールド・ベースボール・クラシック) 「野球の普及と国際化」を理念に、国・地域に分かれて野球の世界一を争う大会。大リーグ機構が中心となり、第1回大会が06年、第2回が09年に開催された。日本代表は第1回は王貞治監督(現ソフトバンク球団会長)、第2回は原辰徳監督(巨人)が指揮。第1回は2次リーグ敗退の危機を乗り越え、決勝でキューバを破り優勝。韓国との決勝となった第2回はイチロー(マリナーズ)の決勝打で延長戦を制し2連覇を飾った。MVPはいずれも松坂(レッドソックス)が受賞。

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2012年7月21日のニュース