“大迫に勝った市民ランナー”森井勇磨の正体 マニアックな記録持つ33歳 賞金の使い道は…

[ 2024年4月20日 14:00 ]

ボストン・マラソンで8位に入り、笑顔の森井勇磨(提供写真)
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 パリ五輪代表、大迫傑(ナイキ)の走りに注目が集まっていた15日のボストン・マラソンで、大激走した市民ランナーがいる。

 京都陸協の森井勇磨、33歳。2時間9分59秒の自己ベストをマークして8位に入った。日本人がボストンで2時間10分を切る“サブ10”を達成するのは、81年大会を2時間9分26秒で制した瀬古利彦以来。2時間11分44秒で13位だった大迫にも勝った。

 「トップ10に入ることが目標だったので、とてもうれしいです!トップ10に入るためには、大迫選手にも勝つことも必要だと思っていましたから」

 森井はマニアックな記録を持つ。舞鶴赤れんがハーフ、福知山マラソン、亀岡ハーフ、京都マラソンと京都4大公認ロードレースを完全制覇。“古都グランドスラム”達成となった京都マラソンの成績で、京都市と姉妹都市として連携するボストンへの派遣が決まった。

 エントリー費用、渡航費、宿泊費が無料に。「自費だととんでもない金額になってしまうので…。ボストンに行くためにも、京都マラソンは勝つことだけを考えていました」と振り返った。

 森井のキャリアは異色だ。京都・山城高から山梨学院大に進学。4年時、箱根駅伝のエントリー16人が決まる直前に左足を痛めてメンバーに入れず。留年して大学に残り、14年の第90回大会で10区を駆けた。

 1時間11分10秒。この大会の山梨学院大は2区でオムワンバが棄権したため、3区以降は参考記録に。森井のタイムは区間5位相当だった。

 「箱根を走れたのは本当に大きかったです。大声援がスタートからゴールまで途切れることがなくて、最高の景色でした」

 卒業後は2度の実業団退部を経て、22年4月からは京都陸協所属。西京極陸上競技場の運営会社に勤務し、競技場の清掃や器具の整備、受付業務などを担う。

 フルタイムに近い形で働いており、仕事のシフトに応じて練習メニューを組む。

 森井が「いやあ、あの人はマラソン界のレジェンドです」と言う川内優輝は、埼玉県庁職員時代、「最強の市民ランナー」として名をはせた。

 川内は大会からの招待を生かして、毎週のように全国各地を駆けることで負荷の高いトレーニングにしていたが、森井のアプローチは違う。

 川内ほどの知名度はないため、自費で遠征を繰り返すのは厳しい。地元のトラックの記録会などに出場することで、レース勘を養ってきた。

 スポンサーはなく、ボストンの賞金8500ドル(約130万円)の使い道は「貯金ですね」と笑う。次の42・195キロは5月26日の黒部名水マラソン。「勝ちにこだわっていきたい」。大迫に勝った33歳は、闘志を高めた。(杉本 亮輔)

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