田中希実 5000メートル8位入賞 左足流血も勇気の猛スパート

[ 2023年8月28日 04:39 ]

陸上 世界選手権第8日 ( 2023年8月26日    ハンガリー・ブダペスト )

女子5000メートル決勝 力走する田中希実(右から4人目)。8位入賞を果たした=ブダペスト(共同)
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 女子5000メートル決勝では、予選で日本新記録を出した田中希実(23=ニューバランス)が14分58秒99で8位に入り、同種目では97年アテネ大会8位の弘山晴美以来、日本選手26年ぶりの入賞を飾った。アフリカ勢と互角以上に渡り合った。

 持てる全ての力を使い切った。田中はラスト30メートルでアフリカ勢2人に抜かれ、8位フィニッシュ。激しいレースの中で左すねから流血しながらの入賞に、思いがこみ上げてきた。「私一人ではここまで来られなかった。感謝の気持ちでいっぱい」と目を赤くした。

 短距離のようなスプリント勝負が求められる現代の5000メートル。勇気ある走りで日本女子26年ぶりの入賞を手繰り寄せた。「ラストまではどの位置にいても一緒」と割り切り、先頭集団後方についた。残り2周から仕掛け、一気に前へ。さらにラスト300メートルから猛スパートで一時は6位まで浮上。1メートル53と一番小柄な田中が、アフリカ勢と互角以上に渡り合った。

今年4月にプロ転向し、心がけるのは「見せるレース」。原点はコロナ下で行われた20年7月のホクレン・ディスタンスチャレンジだった。3000メートル日本新記録8分41秒35をマークしたレースにはオンライン配信で必死に応援した人たちがいると知った。「それ自体が私の勇気に変わった」という。

 今大会は1500メートルで準決勝敗退。「参加するだけの5000メートルなんて意味ないんじゃないか?」と弱気になったが、父の健智コーチや周囲の励ましが骨身にしみた。「他の人が信じてくれてる気持ちを裏切るのは絶対ダメ」。原点に立ち返り、好走につなげた。

 21年東京五輪1500メートル8位入賞は「ビギナーズラック」と分析する。それから2年。苦しみ抜いた先につかんだ結果は、同じ8位でも価値が違う。「二度と忘れない経験ができた。本当の意味で世界のトップに仲間入りできた」。2種目入賞を掲げるパリ五輪へ、確かな自信を手にした。

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