霧馬山改め新大関・霧島　師匠・陸奥親方のしこ名継承「素晴らしい名前。夢みたい」

大関に昇進した霧馬山は「霧島」と改名。右は現役時代、霧島のしこ名で活躍した陸奥親方
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　日本相撲協会は31日、東京・両国国技館で臨時理事会と名古屋場所（7月9日初日、愛知・ドルフィンズアリーナ）の番付編成会議を開き、直近3場所で合計34勝を挙げた霧馬山（27＝陸奥部屋）の大関昇進を満場一致で決定した。照ノ富士以来モンゴル出身6人目の大関誕生。また、昇進を機に師匠・陸奥親方（64＝元大関・霧島）の現役時のしこ名である「霧島」に改名することも発表された。

　陸奥部屋（墨田区）で行われた大関昇進伝達式後の会見で、大きなサプライズ発表が待っていた。新大関が師匠と一緒に持った色紙に書かれていたのは「霧島」の文字。部屋関係者や報道陣からどよめきの声が上がった。師匠のしこ名を継承した霧馬山改め霧島は「素晴らしい名前。夢みたい。入った時から親方みたいな力士になりたいと思っていたので」と感無量だった。

　昇進目安の3場所合計33勝に到達した2日後の14日目夜、師弟で話し合って決めた。師匠は「“いらない”と言われたらどうしよう…」と少しの不安を抱えながら提案。「いいです」と返答され、最初は断られたかと思ったが、喜んで受け入れる意味での「良いです」だったことが後で分かったという。「私を超えてもらいたい。力強い相撲を取ってもらいたい」。下の名も「鉄雄」から「鉄力（てつお）」に改名した。

　伝達式で述べた口上は、稽古熱心で知られる新大関らしい言葉だった。「大関の名を汚さぬよう、今まで以上に稽古して頑張ります」。師匠と部屋付きの鶴竜親方（元横綱）も大関昇進時に「稽古」という言葉を用いており、その教えも受け継いだ。事前に練習してきたはずの口上だったが「皆さんの前で緊張してしまった」と苦笑い。「大関の名を…」の続きが出ずに少し間が空いてしまい、土俵上での堂々とした振る舞いとは違った一面も見られた。

　口上に込めた思いは「稽古のおかげでここまで来たので、ここから上（の番付）へ行くにはこれまで以上に稽古するしかない」と説明。横綱を目指していく決意の表れでもあった。偉大なしこ名を受け継いだ27歳は、師匠がたどり着けなかった頂点を次の目標に見定めた。

　≪両親駆け付けた≫
　霧島の両親がモンゴルの首都・ウランバートルから600キロ離れたドルノド県から来日。父・ビャンブチュルンさん（53）は「とてもうれしい。息子と親方におめでとうと言いたい」と息子の晴れ姿に目を細め、母・エンフゲレルさん（50）は「とても大きくなって強くなっている」と4年ぶりに会う息子の成長を喜んだ。来週、新大関が凱旋する故郷では大勢の親戚が集まって盛大にお祝いする予定という。

　≪師匠「自分の時よりうれしい」≫
　陸奥親方は史上1位のスロー記録となる所要91場所で昇進した33年前の自身の姿と重ね「自分の時よりうれしい」と目を細めた。現役時代は甘いマスクと筋肉質の体で「和製ヘラクレス」と呼ばれ人気を博した。しこ名を継がせる構想は以前から持っており、満を持してのお披露目。弟子と一緒に考えた口上には「一番稽古をやってきたのでそれに尽きる。今まで以上に稽古すれば、もう一つ上も夢じゃない」と期待を込めた。日本相撲協会の定年まで1年を切り、横綱昇進という最後の夢を託せる存在ができた。

　鶴竜親方は、6月3日に控える自身の断髪式に大関として臨むという約束を果たした弟弟子に対し「有言実行できて素晴らしい」と感慨深げ。改名については「霧島」と呼び捨てにするのは気が引けるのか「師匠がいるところで呼びづらいな…たぶん本名の“ハグワ”って呼ぶ」と苦笑いしていた。

　≪08年日馬富士以来≫
　大関昇進を機に改名したのは、08年九州場所後に安馬から改めた日馬富士以来。それ以前では93年初場所後の貴ノ花（貴花田から改名）、つくりの「署」に「、」を付けた92年夏場所後の曙、86年名古屋場所後の北勝海（保志から改名）らがいる。

　◇大関の待遇　日本相撲協会の看板力士として、各種行事に横綱とともに参加する。月給は横綱の300万円に次ぐ250万円。関脇、小結より70万円多い。東京開催場所では両国国技館の地下駐車場を使って出入りが可能。2場所連続負け越しで陥落するが、関脇に落ちた場所で10勝以上すれば翌場所に復帰できる。横綱昇進には2場所連続優勝か、それに準じる成績が必要とされている。

　▼八角理事長（元横綱・北勝海）　多くの期待と重圧に耐えてよく頑張った。気力も充実し、精神的に成長した姿を見せてくれた。これからも自分から勝負していくような相撲をとり続け、まわりから目標とされるような大関になってもらいたい。