【元横綱稀勢の里コラム】楽しみスーパーボウル 対人競技の相撲にも共通するアメフトの駆け引き

[ 2023年2月8日 07:00 ]

二所ノ関親方
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 米スポーツ界最大のイベント、アメリカンフットボールの第57回スーパーボウルが12日(日本時間13日)にアリゾナ州グレンデールで開催されます。チーフス対イーグルス。ファンの私も今か今かと待ちわびています。

 アメフトに、はまったのは08年にジャイアンツのQBイーライ・マニングが最初にスーパーボウルを制覇した頃です。イーライからのパスを、WRデビッド・タイリーがジャンプして相手守備と競り合い、あおむけに倒れ込みながら両手でヘルメットにボールを押し当ててつかんだビッグプレーは“ヘルメットキャッチ”と呼ばれています。感動しました。選手の肉体、パワーはもちろんですが、作戦が重要視されるところに競技の奥深さを感じます。

 さまざまな隊形から繰り出される数多くのプレーは一つ一つに意味があります。両軍の攻撃、守備をそれぞれ統括するコーディネーターが互いに腹を探り合い、周到に用意した作戦の中から状況に応じて実行するプレーを選択していく。相手がこうくれば、こう対処するとか、駆け引きには興味を引かれます。対人競技の相撲にも共通すると感じるからです。相撲に共通するといえば、両軍の最前列でぶつかり合う攻守ラインの戦いもすごい。守備ラインのブルラッシュは両腕と頭の3点で相手に当たり、しっかり力を伝えて押し込む。攻撃ラインはQBを守るパスプロテクションの際に腰をどっしり固め、簡単には押し込まれない形をつくり、見応え十分です。

 選手は米国中から指折りのアスリートが集い、五輪で活躍する選手がNFL出身ということも珍しくありません。高い身体能力を備えた“化け物”ばかりの究極のスポーツ。それを支えるリーグ運営も洗練されています。あるチームに戦力が偏り過ぎないドラフトシステム。選手の移籍が活発で次のシーズンにメンバーがガラリと変わる場合もあり、常に新鮮な印象を与えています。早大の大学院時代にNFLの経営を研究材料の一つにしましたが、本当に勉強になりました。

 さて今年のスーパーボウルですが、イーグルスは好調のQBハーツが万全の状態で出てきます。かたやチーフスも攻撃陣が強力で、両軍が30~40得点する展開でしょうか。初めての黒人対決となったQBの出来が勝敗を分けると、みています。チーフスはQBマホームズとTEケルシーのホットラインが魅力的ですが、イーグルスも攻守がかみ合い、QBハーツのパスがバンバン通っている。今回はイーグルスを応援しようかなと思っています。(元横綱・稀勢の里)

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2023年2月8日のニュース