国枝氏 車いすとともに27年「スポーツとして認めてもらうための戦いだった」引退会見は涙なし

[ 2023年2月8日 04:45 ]

引退会見でポーズを決める国枝(撮影・西海健太郎)
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 車いすテニス男子の第一人者で1月に引退を表明した国枝慎吾氏(38)が7日、東京都内のユニクロ有明本部で会見した。4大大会で歴代最多50回の優勝(シングルス28回、ダブルス22回)を誇り、パラリンピックでは4個の金メダルを獲得。国民栄誉賞授与も検討されているパラスポーツのレジェンドは27年の競技人生を笑顔で振り返り、今後も車いすテニス界の発展に尽力する方針を示した。

 栄光に彩られた競技人生との別れに涙はない。テレビカメラ20台以上、約200人の報道陣が押し寄せた引退会見。国枝氏は「最高のテニス人生を送れた。成績やタイトルでやり残したことはない。本当にやり切ったと思える現役生活を送れた」と言い切った。3日に政府側から国民栄誉賞授与を検討しているとの連絡を受けたことを明かし「自分自身のやってきたことが最大限に評価された。大変光栄」とうなずいた。

 現役生活は「車いすテニスをスポーツとして認めてもらうための戦いだった」と言う。04年アテネ・パラで金メダルを獲得してもスポーツの枠では扱われず、福祉としての社会的意義ばかりが伝えられた。その後は競技の魅力を伝える発信を積極的に行い、観客がエキサイトできるプレーを意識。21年の東京パラで金メダル獲得後は祝福だけでなく、競技自体に魅了されたとの言葉も多くもらった。「東京パラ後の反響でスポーツとしての手応えがあった」。昨年の楽天オープン決勝は満員の中でプレー。タイトルにも代えられない最大の目標を達成したことも引退を後押しした。

 国内唯一のATP(男子)ツアーである楽天オープンは国枝氏の働きかけで19年から車いす部門を創設。車いす部門を併設するATPツアーは世界でも限られており「WTA(女子ツアー)、ATPでどんどん車いす部門をつくっていただきたい。それが一番、手っ取り早いプロモーション。世界各地で僕がお手伝いできれば」と目標を語った。公私で親交のあるフェデラー氏らの協力を得れば実現性は高い。ともに成長してきた愛する競技をさらにメジャーにするべく、レジェンドの第二の人生が幕を開けた。

 ≪ユニクロ会長一緒に事業を≫会見に同席したユニクロの柳井正会長兼社長は「車いすテニスという新しいスポーツのジャンルを確立したことは新しい産業をつくったことと同じ。プロスポーツ選手よりも、経営者としての才能を持っていると思う」と絶賛した。国枝氏とは09年からグローバルアンバサダー契約を締結。「今は世界で困っていることに対して力になりたい。ウクライナの問題、難民の問題、その中でも若い人の力になれることを、NPOとかではなくて事業として国枝君と一緒にやれたら」と語った。

 ▼香取慎吾(パラアスリートを応援)国枝さんの存在に、次の自分の笑顔に会えるように、もっと上の光を目指す力をもらえた人がたくさんいます。僕も、その一人です。お疲れさまでした。そして、これからも応援しています。慎吾は、最強だ!

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2023年2月8日のニュース