森 パラ初出場で“全力疾走”「うれしさしかなかった」、スキー距離スプリント

[ 2022年3月10日 05:30 ]

北京冬季パラリンピック第6日 ノルディックスキー距離 ( 2022年3月9日    国家バイアスロンセンター )

男子スプリント座位予選で、力走する森宏明
Photo By 共同

 ノルディックスキー距離のスプリントが行われ、男子座位で初出場の森宏明(25=朝日新聞社)は31位で初レースを終えた。球児だった高校2年時に交通事故で両脚を切断。不屈の精神ではい上がり、冬の夢舞台を滑走した。男子立位20キロクラシカル金メダルで2冠を狙った川除大輝(21=日立ソリューションズJSC)はスプリント・フリー(立位)で準決勝敗退となった。

 まるでダイヤモンドを駆け巡るように、白銀の世界を疾走した。初めてのパラリンピックのレースに、森は高揚していた。「もう、うれしさしかなかった。ここにいる人たちの中で、自分が一番幸せだなと思った」。持ち味は存分に発揮した。レース開始直後から勢い良く滑走。「見せ場だと思っていたスタートダッシュで見せることができた。出し切った」。大舞台でつかんだ手応えを口にした。

 野球少年だった。小学校から始め、中学時代は日本ハムの万波中正らを輩出した名門・東練馬シニアでプレー。同じく日本ハムの浅間大基とは対戦経験もあるという。淑徳高ではエースとしてだけでなく、野手もこなす実力者。大学や社会人でもプレーを続けることが目標だった。

 その日常が高校2年時に暗転した。13年夏、駐車場で運転を誤った車にはねられた。緊急手術で命は取りとめたが、両膝から下を切断した。それでも野球で培った不屈の精神でリハビリに耐え、復学後は義足で自転車通学。翌年、最後の夏は練習や試合前にバッティングピッチャーやノックを務めた。

 さらなる転機は明大3年の時。都障害者スポーツ協会からノルディックスキーの誘いを受けた。その後は会社員としてスポーツ事業に携わりながら、トレーニングの日々。野球で鍛え上げた背筋が武器となり、急成長して北京切符をつかんだ。

 大舞台初のレースは目標の入賞に届かなかった。だが、それは最初のステップに過ぎない。残る個人種目は12日の10キロ。「出し切って、感謝の滑りをしたい」。最後の一瞬まで“全力投球”することは、昔も今も変わっていない。

 ◇森 宏明(もり・ひろあき)1996年(平8)4月26日生まれ、東京都板橋区出身の25歳。淑徳高―明大―朝日新聞社。小学生から野球に打ち込み、主に投手。交通事故で両脚を切断した高校2年の夏までは、淑徳高で野球部主将も務めた。17年からパラノルディックスキーを開始。猫とコーヒーが好き。趣味は読書。

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2022年3月10日のニュース