スポーツ界今年の言葉 大谷翔平 貫いた「リアル二刀流」 新庄ビッグボスが席巻 羽生は五輪3連覇へ
新型コロナウイルス感染拡大により生活様式が大きく変わり、丸2年がたった2021年。長引くコロナ禍や緊急事態宣言の発令により、ステイホームを余儀なくされる中、MLBではエンゼルスの大谷翔平がMVPを獲得する大活躍を見せ、松山英樹がマスターズを制覇するなどスポーツが日本中に勇気を与えた。一方で、各界の希代の名プレーヤーが相次いで現役生活に別れを告げた。そんなスポーツ界から出た今年の心に残る言葉を振り返り、ピックアップする。
まずは何と言っても、エンゼルスの大谷翔平だ。今年話題になった言葉に贈られる「2020ユーキャン新語・流行語大賞」では「リアル二刀流/ショータイム」が年間大賞を受賞した。大谷は今季、9勝&46本塁打など投打で歴史的活躍。4月4日のホワイトソックス戦で、メジャー4年目で初めて投打同時出場し、初回に先制本塁打を放ち、投げては最速101・1マイル(約162・7キロ)をマーク。「リアル二刀流」で全米に衝撃を与えた。初出場した7月のオールスター戦は史上初めて投打で先発出場。二刀流での球宴出場が実現したことで、今後若い選手が限界を決めずに挑戦できるようになるとの見方に「日本時代は否定的な意見ばかりだったので、そう言ってもらえること自体ありがたいこと。励みになるんじゃないかと思います」と万感の思いを口にした。
「翔平」の名をかけた「ショータイム」のフレーズは日本だけではなく、米国でも幾度となく使われた。手術をしながらも二刀流にこだわり続ける一方、プレー以外でもゴミを拾ったり、審判に敬意を払う姿が称賛されるなど一挙手一投足が注目の的に。コロナ禍に沈む世の中に、まさに夢と希望を与える存在となった。
日本のプロ野球では、新庄剛志氏の日本ハム監督就任が大きな話題を呼んだ。就任会見ではド派手な襟高のワイシャツとスーツで登場し「監督って呼ばないでほしい。『ビッグボス』でお願いします」とお願い。常に真っ向勝負の「新庄節」を炸裂させ、SNSを駆使したり、トークバラエティにも積極的出演するなどチームを惜しみなくPR。暗い世相の中で、新庄ビッグボスの明るく楽しいキャラクターが野球に興味がない人たちをも振り向かせた。来年、指揮官としてチームをどう導いていくのか。ワクワクが止まらない。
シーズンイン直前の1月には田中将大がヤンキースから古巣・楽天へ8年ぶりに復帰のニュースで沸いた。コロナ禍の影響で12球団が全て無観客の中でキャンプイン。ペナントレースでは前年最下位だったヤクルトが、パ・リーグ王者のオリックスとの日本シリーズを制し、20年ぶりの日本一。高津臣吾監督の「絶対大丈夫」を合言葉に、第6戦では延長12回5時間の死闘を制して頂点に立った。昨年2月に亡くなった野村克也さんにささぐ日本一となった。
一方、甲子園を沸かせ、日本中を熱狂させた2人の投手が相次いでユニホームを脱いだ。
横浜のエースとして98年の春夏甲子園を連覇し、西武、日本代表、メジャーと日米で活躍した「平成の怪物」こと西武の松坂大輔投手が引退を発表。引退会見では涙を浮かべながら「野球が好きなまま終われて良かった」と語った。スターぞろいだった同学年は「松坂世代」と称され、「みんながいたから先頭を走ってくることができた」と松坂らしいコメントを残した。
2006年夏の甲子園で早実のエースとして全国制覇し、「ハンカチ王子」の愛称で注目を浴びた日本ハムの斎藤佑樹投手も今季限りで現役を引退。ひじの故障に苦しみ、復活を目指していた中での決断だった。それでも「約11年間、北海道日本ハムファイターズで最高の仲間とプレーすることができて幸せでした。長いようでこの11年間はとても短く感じました」と言葉を残した。
大相撲でも稀代の名横綱が土俵に別れを告げた。史上最多の優勝45回を誇り、長く第一人者として活躍した第69代横綱・白鵬が現役を引退。モンゴルから00年秋に来日。通算1187勝、幕内1093勝など数々の史上1位記録を樹立。引退会見では「ほっとした気持ちでいっぱい。(21年の力士生活は)本当に早いような感じがする。相撲が大好き、幸せ者だなと思う」と清々しい表情を浮かべた。
ゴルフ界では松山英樹がマスターズで日本人男子史上初となるメジャー制覇を達成。4打差の単独首位から出て4バーディー、5ボギーの73にまとめ、通算10アンダーの278で逃げ切り、悲願の初優勝を果たした。「朝からずっと緊張していた。最後まで緊張しっぱなしで終わった。僕が勝ったことによって日本人が変わるのではないか。僕がもっともっと勝てるように頑張りたい」と感無量の面持ちで語った。また、松山についた早藤キャディーが最終日の18番ホールで、優勝のパットを決めた後にピンを戻し、帽子をとってコースに一礼。大会に敬意を表した行動が海外メディアに取り上げられ、称賛を浴びた。
6月に行われた全米女子オープンでは笹生優花と畑岡奈紗がメジャー史上初めて日本勢によるプレーオフを争い、プレーオフ3ホール目で笹生がバーディーを奪取して優勝。77年全米女子プロ選手権の樋口久子、19年AIG全英女子オープンの渋野日向子に次ぐ日本女子3人目のメジャー制覇で、世界最高峰の大会を史上最年少で制した。笹生は「夢は世界一になることと全米女子オープンで勝つこと。本当に今週できるなんて信じられない」と涙を拭った。
27日に幕を閉じた全日本フィギュアスケート選手権では、男子で14年ソチ、18年平昌五輪連覇の羽生結弦が合計322・36点で2年連続6度目の優勝を飾り、来年2月の北京五輪出場権を獲得した。公式戦では自身初挑戦となった4回転半は両足着氷となり認定されなかったが、フリー、合計点とも非公認記録ながら自己記録に肉薄し、今季世界最高を上回った。会見では、北京五輪に向け「出るからには勝ちをしっかりつかみ取ってこれるように」と、94年ぶりとなる五輪3連覇を目指すことを初めて明言した。
去る人がいれば、新たに光を浴びる人もいる。来年、スポーツ界からは心に残る言葉がいくつ出るだろうか。
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