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スノボ女子ビッグエア岩渕麗楽“一瞬”の判断ミスから進化、悲願金へ 北京五輪開幕まで50日

[ 2021年12月16日 05:30 ]

5日のスノーボードW杯の女子ビッグエア、優勝した岩渕麗楽
Photo By ゲッティ=共同

 スノーボード・スロープスタイル(SS)とビッグエア(BA)で2大会連続五輪出場を目指す岩渕麗楽(れいら、20=バートン)は3年前の平昌五輪で、たった一つの判断ミスにより冬のヒロインになり損ねた。これまでW杯通算7勝を挙げ、50日後に開幕が迫った北京五輪の金メダル候補が今でも悔やみ、進化の原点となった0・1秒にも満たない分岐点とは。

 「一番記憶に残っているのは、3本目(のジャンプ台)を抜ける直前」。当時新種目だったBAの予選を3位通過。決勝は1本目で79・75点とまずまず。続く2本目、その年のXゲームで銀メダル獲得の決め手となった縦2回転、横3回転するバックサイドダブルコーク1080(DC10)を試みて手をついた。逆転メダルへ後がない3本目、攻めの気持ちを貫いて再びDC10に挑戦も、回転不足で尻もちをついた。3位とは10点差。着地できれば逆転できたはずだ。

 「一瞬のことだったけど、もうちょっと強く回すか、先行動作を入れるか、凄く迷った。風を気にして弱くした結果、立てなかった。その判断ミスは強く記憶に残っている。抜けた後の“ダメだな”という感覚も。着地(で失敗)した時よりも悔しい瞬間になった」

 強気の勝負に出たが、最後に弱気の虫に負けた。当時16歳。10年バンクーバー大会の浅田真央を超える日本女子の冬季五輪最年少メダル記録は、手からスルリと逃げていった。

 ただ、0・1秒にも満たない一瞬の判断ミスの原因を、自分自身の取り組みに求めた。W杯デビューは平昌五輪シーズン。国際舞台での実戦経験も少なく、何よりも「今に比べて五輪を意識して練習した期間が短かった」。普段の練習でも、恐怖心から大技はあまり回数を重ねていなかった。平昌でのDC10も「公開練習で1回くらいしかやっていない。ぶっつけ本番だった」。自分自身の変革が、北京への4年間のスタートだった。

 まず取り組んだのが肉体改造。どんな状況でも着地できる体をつくるため、長友佑都や久保建英ら多くのサッカー選手を指導してきた木場克己氏に師事した。体幹トレーニングの草分けである同氏の下で、定期的にトレーニング合宿を敢行。「一番大きな変化は腹筋にしっかり力を入れることができるので、滑っている時と着地で体のぶれがなくなった」と効果を実感。技の成功率は大きく上がった。

 精神面も成長した。練習で妥協したくなった時、思い出すのは平昌のこと。「ここでやらなければ同じ結果になる、と思うようにしている。いい意味で、気持ちを引きずっている」。メダルを逃したとはいえ、多くのスポンサーが付くようにもなった。「楽しくやりつつも、スノボをすることに責任も感じるようになった」と、自分一人を数え切れないほどの人が支えてくれていることを、常に頭の片隅に置いている。

 今季はW杯BA第2戦で優勝。平昌女王のアンナ・ガサー(オーストリア)らに完勝したが、「女子のレベルは前回五輪から一気に上がった。DC10は予選で使う技で、勝負トリックというには物足りない」と満足感はない。メダル獲得へ必須になりそうなのが、横3回転半か縦3回転を組み込んだ大技で、「確実に獲るなら2つ必要」と、トリック技術とそれに耐え得る体づくりに今も同時並行で取り組む。

 平昌には両親や祖父母が駆け付けてくれたが、北京は新型コロナウイルスの影響で外国からの観客入場が見送られた。「前回の結果を、私以上に周りががっかりしたと思う。メダルを持って帰りたい」。北京土産は、ただ一つ。4年の月日の結晶のような、輝くメダルと決めている。

 ☆生まれ 2001年(平13)12月14日生まれ、岩手県一関市出身の20歳。
 ☆競技歴 4歳でスノーボードを始める。幼少期から各種大会で活躍し、中1でプロ転向。中3だった17年の全日本選手権SSで初優勝。同年からW杯に参戦し、12月には米コッパーマウンテンでのBAで初優勝。18年平昌五輪代表に選出され、BA4位、SS14位。W杯通算7勝。
 ☆サイズ 身長は「6月の健康診断でギリギリ150センチありました」とうれしそう。
 ☆特技 海外遠征ではキッチン付きの部屋に泊まることが多いことから、10代の頃から料理が得意。得意料理は海外に多いオーブンを使ったグラタンやドリア。和食ではサバの味噌煮。
 ☆趣味 最近ハマっているのが写真。チームのカメラマンから一眼レフを譲り受けて以来、景色やポートレートを撮って楽しむ。競技の撮影をすることも。
 ☆スポ根 プロになるまでは父・和宏さんがコーチ役を務めており、指導ではシビアな一面も。大会では優勝しても内容が悪いと「片道4時間の帰りの車中で、ぶっ通しで怒られたこともあります」。
 ☆ルーティン 試技のギリギリまで音楽を聴くこと。「何も考えない状況をつくりたい。周りを遮断したい」ことから、曲やアーティストにこだわりはなく、歌詞の内容が分からない洋楽が中心。

《出場枠男女各「4」女子は3人クリア》スノーボード・スロープスタイル、ビッグエア 出場枠は男女各4。直近2季の世界選手権、W杯で3位以内を1回以上など、所定の成績を満たした選手から1月中旬に選出。男子は飛田流輝ら4人、女子は岩渕ら3人がクリア。

 ▽スロープスタイル(SS) コース上に設置されたジブアイテムと呼ばれる障害物やジャンプ台を使い、滑りの難易度や独自性を争う採点競技。タイム争いはない。競技会ではベストラン方式が採用され、2回もしくは3回の試技のベストスコアを争う。五輪では14年ソチ大会からスノーボードとフリースタイルスキーの両方で採用された。これまでに日本勢のメダル獲得はない。

 ▽ビッグエア(BA) 高さ30メートル以上、斜度20~40度のキッカーと呼ばれるジャンプ台を使い、高さやトリック(空中技)の難度、着地などを競う採点競技。3回の試技のベストスコア2本の合計点で争う。元々はXゲームなどのプロ競技会で人気の種目で、五輪では18年平昌大会から採用。雪の少ない都市でも開催が可能で、北京五輪でもスノーボード種目では唯一、北京市内の会場で行われる。

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