【ラグビー日本代表2021秋の陣《5》】レジェンドを“破壊” ジェームス・ムーアの絶対的存在感

[ 2021年10月5日 09:46 ]

ジェームス・ムーア
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 さわやかな風ぼうでいて、プレーはひたすらハード。試合翌日、顔に腫れや傷をこしらえても、穏やかに微笑めば逆に好漢ぶりが際立つ。この7月、ようやく通算キャップが2桁に乗ったばかりのジェームス・ムーア(28=NTTコムシャイニングアークス東京ベイ浦安)。宮崎合宿で同部屋になった19歳のワーナー・ディアンズに「ゲームばかりしているので、あまり深い話しはしていない」とバラされたが、むしろほっこりした気持ちになるのは、その為人ゆえか。

 6月の全英・アイルランド代表ライオンズ戦では試合開始早々、味方ラックに低い姿勢でスイープに行った際、相手主将で歴代世界最多キャップを持つアルウィン・ジョーンズ(AWJ)にヒット。不幸にも負傷交代に追い込んでしまった。試合後、AWJと直接話す機会があり、「状態は良くなさそうだと聞いて、これで離脱なら申し訳ないという気持ちになった」という。左肩を脱臼したAWJは実際に南アフリカツアーから一度は離脱したが、その後驚異的な回復を見せ、後半にはチームに再合流している。「チームに戻り、安心した」と語るムーアは、やはり心優しきナイスガイだ。

 19年W杯を一緒に闘ったトンプソン・ルークはすでに引退し、この秋も宮崎合宿に招集されたヴィンピー・ファンデルバルトは故障で離脱を余儀なくされた。ただでさえ層が薄いとされるロック勢でのプレゼンスはますます高まるが、相対的に語らずとも、ムーアの絶対的存在感はくだんのライオンズ戦や、その後のアイルランド戦で両チーム最多のタックル回数、2度のラインアウトスチールで示された通りだ。それでも現状に満足せず、「合宿やツアーは何を求められているかを頭に入れて、上達をしないといけないし、能力を証明しないといけない。ただ呼ばれて練習をこなすだけではダメ。自分の課題はボールキャリー。ボールを持ったら前に出て、勢いを付けたい」と危機感を持つ。スイッチオフの時間は少し隙を見せているかも知れないが、練習では新進気鋭の19歳やその他のロック選手にも良き見本となっていることだろう。

 秋のテストマッチ初戦はいきなり母国オーストラリアと対戦する。「生まれ育った国との対戦で、特別な気持ちになるとは思う」。感情は少し乱れるかも知れないが、ポジティブなエネルギーへと転換して、前への推進力にするだろう。

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2021年10月5日のニュース