カトパン見た五輪 東京で流した涙はパリへの架け橋 4年間の人気連載“完結”

[ 2021年8月12日 05:30 ]

16年10月、連載第1回で対談した池江璃花子(左)と加藤綾子
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 【カトパン突撃!東京五輪伝説の胎動 最終回】数々の感動とともに8日に幕を閉じた東京五輪。2016年から4年間、スポニチ本紙連載「カトパン突撃!!東京五輪 伝説の胎動」で多くのオリンピアンを取材したフリーアナウンサー加藤綾子(36)が、素顔を垣間見た選手たちの奮闘や重圧、それぞれの涙の思いを振り返った。

 全37回の連載で、東京五輪出場を果たしたのは23選手。取材ではそれぞれの個性や素顔に触れる機会がたくさんあり応援に力が入りました。コロナ下で開催自体に賛否両論がある中、印象的だったのは選手たちの涙。さまざまな思いを雄弁に語っていたように感じました。

 2016年10月、連載第1回で対談した競泳の池江璃花子選手。白血病を克服して参加した東京五輪での涙は、戻ってこられたことへの感謝やうれしさがあふれていたように思います。取材当時は女子高生。「服は何を買えばいいですか?」と聞いてきたり、心も体も健やかな、素直で人なつこい少女でした。

 五輪では凜(りん)としていて、大人になっていました。あどけない少女には大きすぎる試練を乗り越えた、やりきったという思いが伝わって、心打たれました。

 代表内定直後に取材したレスリング男子グレコローマン60キロ級の文田健一郎選手は、銀メダルにもかかわらず「申し訳ない」と涙しました。取材では、猫やタレントの橋本環奈さんへの愛を語る気さくさと裏腹に「東京で金」という目標を何度も口に。強い執念を感じました。練習で反り投げを何十万回も繰り返した努力が実らず、周囲が「金メダル確実」と期待する中での敗戦。穏やかで優しい人柄だけに号泣する姿に胸が苦しくなりました。

 昨年元日の特別紙面でご一緒した柔道の大野将平選手は「勝っても負けても泣かなくなった」と話していましたが、リオに続く五輪連覇を果たした後、井上康生監督の胸に顔をうずめ、涙を浮かべていました。

 取材では、孤高のプライドを感じましたが、リオ五輪後は柔道家として苦しい日々を過ごしたと明かしてます。その上1年以上実戦から遠ざかり、当日の状態も万全でなかったと聞きます。ニッポン柔道のエースとしての使命感の中、連覇をやり遂げた。試合直後のインタビューでは淡々としていた大野選手が、苦楽を共にした井上監督を前にしての男泣きに感動しました。

 連載の最後を飾った空手の清水希容選手の試合は日本武道館で取材しましたが、無観客ということもあり極度に張り詰めた雰囲気の中、惜しくも銀。「予選よりも足場が浮ついてしまった」と、緊張で実力を全て出し切れなかったことも涙につながったのかもしれません。

 「技は一生かけて成長する」と、大会延期も前向きに捉え、減点対象だった呼吸の大きさを克服するため特製のマウスピースで矯正するなどして挑みましたが、宿敵サンチェス選手の大きな壁を越えることはできなかった。負けたこと、やり切れなかったこと。複雑な涙に感じました。パリ五輪では競技採用されていませんが、3カ月後の世界選手権で頂点に返り咲いてほしいです。

 パンデミックの中で開かれた東京五輪。全てを懸けたアスリートの戦いは勇気というプレゼントをくれました。改めて「スポーツっていいな」と思いました。

 パリ五輪まで3年。選手の涙はきっと、これからにつながる。世界中が笑顔になる五輪にするため、我々も何ができるかを考えていきたいと思います。

 《国立競技場で閉会式取材「寂しい感じはなかった」》加藤はメインキャスターを務めるフジテレビ「Live News イット!」(月~金曜後3・45)の取材で、8日に閉会式が行われた国立競技場に足を運んだ。18年の平昌五輪以来の閉会式取材。「あの時のように歓声がなかったのは残念だけど、観客席は人がいるように見えるモザイク模様だったこともあって、寂しい感じはあまりなかった」と感想。日本選手団について「リラックスして柔らかい表情だったことが印象に残ります。次につながる舞台ができてよかった」と話した。

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