新谷仁美「OLより給料が良かったー」 社会人生活を経て代表までの道のり

[ 2021年6月27日 17:53 ]

陸上日本選手権 ( 2021年6月27日    ヤンマースタジアム長居 )

<陸上日本選手権>女子5000メートル決勝 五輪出場内定を決め、抱き合う優勝の広中璃梨佳(手前)と2位の新谷仁美(撮影・北條 貴史)
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 陸上・日本選手権女子5000メートルで、新谷仁美(33=積水化学)が1万メートルに続いて2種目目の代表切符をつかんだ。右足裏筋膜炎に苦しみ、13年世界選手権1万メートルで5位になった後の14年に引退。25歳は才能を惜しまれながらシューズを脱ぎ、一時は会社員生活を送った。

 復帰に向けて動き始めた17年秋まで、引退している間は一切走らなかった。それどころか、方々から届いたゲストランナーの誘いも全て断った。理由は「走ることがしんどいと思っている人間。そんな人間が走る楽しさを伝える場所に立っていいのか、という疑問があった。走ることからなるべく関わりたくなかったというのが本音」と徹底していた。運動は、自宅で毎日、腹筋を100回するだけだった。

 事務の仕事でパソコンに向き合う日々は、陸上競技とは性質の異なる難しさがあった。自分の居場所がなかなか見つけられずに過ごしていた時に、シューズメーカーから復帰の話を持ちかけられた。「OLで給料をもらうより、走る方が給料が良かった」と表向きはいうが、自分が自分であるために走り始めたのが本当の理由だろう。

 18年6月の復帰初戦。3000メートルで設定タムより遅れたものの、「なんちゃってアスリートをしている感じ。走り始めてすぐ恥骨を骨折。才能どこ行ったと笑ってしまった」と語る表情は明るかった。悪戦苦闘した社会人生活も「外を知る意味で人生において、非常にためになった」とプラスに受け止めている。12年ロンドン五輪に続く、5000メートル&1万メートルの2種目代表で、新しい味を見せてくれそうだ。

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2021年6月27日のニュース