オンラインで世界はつながる ラグビー未開の地、ミャンマーの子どもに遠隔レッスン

[ 2020年6月9日 11:32 ]

サッカーボールを使ってオンラインレッスンを受けるミャンマーの施設「ドリームトレイン」の子どもたち(ジャパンハート提供)
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 日常からスポーツを奪った憎きコロナながら、不自由な生活だから生まれたこともある。都内を中心に小中学生向けのラグビー教室を開く「ブリングアップ・ラグビーアカデミー」が、ミャンマーの子どもをオンラインレッスンに招待した。

 ラグビー未開の地ゆえ、楕円球はない。ボールを使ったメニューは、同国で盛んなサッカーのボールを代用した。言葉の壁は、日本語ができる現地の大学生が取っ払った。

 11年W杯日本代表主将で、「ブリングアップ」を運営する菊谷崇さんは「運動を楽しむことができたと思う。それは全世界で通用するところがある」と、いつもの明るい声を飛ばした。5月中旬から週2回、1回60分、遊びの要素が詰まったトレーニングやエクササイズを実施。好評につき今月も続けられる。

 当初は、「ステイホーム」が続く日本の生徒向けに始めた。それが、東南アジアとの同時レッスンになったのは、「ブリングアップ」を運営する03、07年W杯日本代表主将の箕内拓郎さん、W杯3大会出場の小野沢宏時さん、菊谷さんのレジェンド3人が、アジア地域ともともと交流を持っていたからだ。

 人が人を呼ぶラグビー人脈で、特定非営利活動法人「ジャパンハート」とつながる。同団体は、病気で親を亡くした子ども、貧困で人身売買の対象となる危険性が高い子ども、紛争から逃れて保護された子どもなど、恵まれない子どもたちを同国で支援している。その養育施設「ドリームトレイン」で過ごす子どもが、オンラインレッスンに参加した。

 現地の職員、那須田玲菜さんが「男子は、サッカーに生かしたい、筋肉を付けたいという目的意識を持って参加している」と声を届けてくれた。レッスン後は未知の競技に興味を抱いたようで、「何人制?どうしたら得点になるの?」という質問が相次いだという。百聞は一見にしかず。昨年のジャパンの試合を見せたところ、ラガーマンの巨体に驚きを隠さなかったそうだ。

 学校の授業で体育がない女子、低体重の子、集中力を持続しづらい子を含め、「定期的なトレーニングをきっかけにして、心身ともに健康になってほしい」とオンラインレッスンに期待を寄せる。日本とのつながりが、様々な境遇の子を抱える施設のビタミン剤になっているようだ。

 アジア初のW杯開催となった19年日本大会で、ジャパンは初の8強入りをした。地域のリーダーとして果たすべき役割は何か。ネパールやベトナムなどを訪問し、再利用できるボールを寄贈している菊谷さんは、「アジアのトップとして必要とされているところがある」と普及の責任を説く。ミャンマーの施設との交流は、日本ラグビー協会でも話題になり、スリランカ、インドにもオンラインレッスンの輪が広がる可能性があるそうだ。

 日本人初の世界殿堂入りをした坂田好弘さんは「ラグビー・オープンズ・メニー・ドアーズ(ラグビーは誰でも受け入れる)」という言葉をよく口にする。菊谷さんの大体大時代の監督でもある坂田さんのモットーが示すように、この競技には「寛容さ」が深く根付いている。見る人にはそれが魅力でもあり、「いい話」の数々が、19年W杯を機に世間に広まった。ラグビー途上国との関係は代表の強化につながらないかもしれない。しかし、である。いかにもラグビーらしい、心の温かさを生むことは確かだ。(倉世古 洋平)

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