「これからも勝武士と一緒に」師匠・高田川親方、悲運の愛弟子へ思い語る

[ 2020年6月2日 05:30 ]

5月13日に死去した勝武士さん(中央)
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 5月13日に新型コロナウイルス性肺炎による多臓器不全で亡くなった大相撲の三段目力士、勝武士(本名末武清孝)さん(享年28)の師匠である高田川親方(元関脇・安芸乃島、53)が1日、日本相撲協会を通じ、書面で愛弟子についてコメントした。勝武士さんと同郷で1年先輩の幕内・竜電(29)ら部屋の関取衆も、早すぎる死を悲しんだ。

 勝武士さんの早すぎる死から19日。沈黙を守ってきた高田川親方が報道陣の質問に書面で答え、「誰からも愛される大事な家族を失った悲しみは言葉にできません」と悲痛な胸の内を明かした。

 勝武士さんは4月10日に感染を調べるPCR検査で陽性が判明。同19日に病状が悪化した。高田川親方も感染が確認され入院したが、同30日までに退院。愛弟子の退院を信じて疑わなかったが、1カ月以上の闘病生活の末に帰らぬ人となった。「私の体調回復を待っていたかのような最期でした」と明かした。

 「相撲のみならず、初っ切りでも活躍したムードメーカーでした」という愛弟子との出会いは、自身が部屋付き親方で勝武士さんが山梨・竜王中1年のときだったという。「“俺が親方の本当の一番弟子だ”といつもうれしそうに話していた顔が忘れられません」と当時を思い起こした。

 竜電にとって、自身の付け人も務めた弟弟子はかけがえのない仲間だった。小学校時代から同じ柔道スポーツ少年団に通っており、「22年間ずっと一緒で、誰よりも自分のことをよく知る弟のような存在でした」という。入院後に送ったメールに「大丈夫です!!また連絡します」と返信が来たが、それが最後のやりとりになってしまった。「明るく、優しく、いつもそばにいるのが当たり前の存在を失い、心にぽっかりと穴があきました」と喪失感は計り知れない。

 高田川部屋の力士は既に、無観客開催を目指す7月場所(7月19日初日、両国国技館)に向けてトレーニングをしている。竜電は「これからも見守ってくれている勝武士と共に、今まで以上に相撲道に精進します」と誓い、高田川親方は「これからも勝武士と一緒に部屋一丸となって頑張っていこうと、みんなで誓い合いました」とつづった。勝武士さんの魂はそれぞれの心の中で生き続けていく。

 【高田川親方コメント全文】
 このたびは大変ご心配をおかけいたしました。医療従事者のお力添えを得まして、健康状態もようやく回復いたしました。

 ただ、残念ながら、大切な家族であり弟子である勝武士が新型コロナウイルスによる多臓器不全で亡くなりました。

 医療機関が切迫した時期と重なっていましたが、相撲協会の対応もあって重篤化する前に入院できたので、元気で帰ってきてくれるものと信じておりました。しかし、容体が急変し、1カ月以上の闘病の末帰らぬ人となりました。私の体調回復を待っていたかのような最期でした。

 勝武士は相撲のみならず初っ切りでも活躍したムードメーカーでした。私が部屋を興す前、彼が中学校1年生の時に初めて会い、一番最初に声をかけたのが勝武士でした。「俺が親方の本当の一番弟子だ」と、いつもうれしそうに話していた顔が忘れられません。

 誰からも愛される大事な家族を失った悲しみは、言葉にできません。しかし前を向き、これからも勝武士と一緒に部屋一丸となって頑張っていこうと、最期のお別れでみんなで誓い合いました。

 現在、力士たちは意欲的にトレーニングに取り組んでおり、7月場所に向けて徐々に本格的な稽古を再開する予定です。

 最後に、尽力してくださった医療従事者の方々、励ましてくださったファンの皆さまには大変感謝しております。

 本当にありがとうございました。

 高田川 勝巳

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