追悼連載~「コービー激動の41年」その91 レイカーズはなぜ誕生したのか?
コービー・ブライアントは現役生活の全20シーズンをすべてレイカーズの選手としてまっとうした。ではやがてジェリー・ウエスト、カリーム・アブドゥルジャバー、マジック・ジョンソンらを含めたスーパースターたちを輩出した西海岸のチームはどうやって誕生したのだろうか?そこにはブライアントの人生同様に波乱万丈のドラマがある。
北米プロスポーツ界では、たとえ他の都市に移転してもニックネームが変わっていないチームが複数存在している。ユタ州ソルトレイクシティーを本拠にしているNBAのジャズは音楽が盛んなルイジアナ州ニューオーリンズで誕生したのでその名がついたが、その後は慣れるまで違和感が漂い続けた。カナダのバンクーバーからNBAのグリズリーズを譲りうけたテネシー州メンフィスはきっと名前を音楽にちなんだものにしたかったはずだ。エルビス・プレスリーが出世を遂げたこの町で、大きな熊(グリズリー)を見た人はおそらくいない。
大リーグにもアンバランスなチームが存在する。それはロサンゼルス・ドジャースだ。ルーツはニューヨーク州ブルックリン。「Dodgers」の「Dodge」はドッジボールのドッジで、年配のバスケ経験者の方ならその昔、「ドッジ(フェイクを入れる)してボールをもらえ」と教わった記憶があるかもしれない。路面電車をひらりひらりと避けながら歩く人々がドジャー。だからブルックリン・ドジャースは地域のイメージを表現するのにピッタリの名前だった。しかしロサンゼルスに路面電車はない。そしてブライアントのいたレイカーズもこの超アンバランス組に属している。
レイカーズがミネソタ州ミネアポリスで誕生したことをご存知の方は多いだろう。厳密に言えば1946年に当時のNBLというリーグで発足したデトロイト・ジェムズ(GEMは宝石という意味)が母体となるが、ジェムズの成績(4勝40敗)はチームの通算成績には加算されないので、ミネアポリスが発祥の地ということになる。湖沼の多いこの町の異名は「City of Lakes」。だからレイカーズとなった。
しかしそこは厳密に言えば“起点”ではない。なぜミネアポリスという都市にその後NBAの強豪となるチームが生まれたのか…。お手元に米国の地図があったら広げてみてほしい。ミネアポリスは米国の真ん中の上。カナダと国境を接している。ミネアポリス市はお隣のセントポール市とともに「ツインシティー」とも呼ばれている。さてその東に隣接しているのがウィスコンシン州。NFLパッカーズの本拠地グリーンベイ、大リーグ・ブルワーズ&NBAバックスのミルウォーキーなど、日本人にもピンとくる地名が見えるはずだ。
もう少しよく見てみよう。ミシガン湖の近くに「Sheboygan(シボイガン)」と「Oshkosh(オシュコシュ)」という町が書き込まれてはいないだろうか?この2つの地名を覚えていてほしい。もしあなたがレイカーズに、そしてブライアントに少しでも思い入れがあるなら、そこは“真のルーツ”となるからだ。
1946年12月1日。この日がレイカーズの夜明けだった。戦争は終わり、スポーツが盛んだったミネアポリスにもやっと人々の娯楽が戻ってきた。しかしそれは野球でありフットボール。まだバスケットボールは庶民の生活に入り込んではいなかった。息が白くなるほど冷え込んだその日の夜、ミネアポリス公会堂で行われたのが、1937年に発足していたバスケのプロリーグ、NBLの試合。対戦したのがシボイガン・レッドスキンズとオシュコシュ・オールスターズの2チームだった。どちらもウィスコンシン州からやってきた面々。当時のポスターを見てみると、オールスターズの下には「World Champion」と堂々と書かれている。NBLは米国の中西部のリーグだったので「全米王者」と記すだけでも物申したいところだが、そこを突き抜けて「世界王者」としてしまうあたりに、アメリカ人のおおらかさが感じられる。
オールスターズにはミネアポリス出身の選手がいたこともあり、会場は5500人のファンで満員。さて、なぜこの試合がこの場所で行われたのか?そこにレイカーズ誕生の真実がある。(敬称略・続く)
◆高柳 昌弥(たかやなぎ・まさや)1958年、北九州市出身。上智大卒。ゴルフ、プロ野球、五輪、NFL、NBAなどを担当。NFLスーパーボウルや、マイケル・ジョーダン全盛時のNBAファイナルなどを取材。50歳以上のシニア・バスケの全国大会には一昨年まで8年連続で出場。フルマラソンの自己ベストは2013年東京マラソンの4時間16分。昨年の北九州マラソンは4時間47分で完走。
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