女子やり投げ・北口、飛距離伸ばすテレワーク 東京五輪メダル候補“スマホ”で飛躍

[ 2020年4月13日 07:00 ]

春――新たな挑戦 Challenge

JALの練習着に身を包み心機一転の北口
Photo By スポニチ

 新型コロナウイルスの感染拡大が世間に暗い影を落とす中で、新年度が始まった。新しい環境で一歩を踏み出す選手や、さまざまなチャレンジをする選手を取り上げる。今春、JALに入社した陸上女子やり投げの日本記録保持者・北口榛花(はるか、22)がスポニチの電話取材に応じ、スマホを駆使したチェコ人コーチとの遠隔交流など、さらなる飛躍のカギを語った。

 桜の季節にしては、少し寂しい門出だった。北口のJAL入社式は、都内の自宅でパソコンを使ったオンライン参加。研修も同様の形で受け、同期とチャットで意見を交わした。異例の春。それでも、新社会人として意識は高まっているという。

 「やり投げはまだマイナー種目だし、注目という意味で、女子選手は男子に劣っている部分もある。そういうところに貢献したいし、今年から日本航空の社員になるので、自分が頑張ることで広告として貢献したい」

 所属が変わっても、母校・日大が練習拠点であることは変わらない。変わった点といえば、新型コロナウイルスの影響で施設が使えないため、自宅用のトレーニング道具を購入したことだ。

 「バランスボール、ヨガマット、チューブを買いました」
 練習風景を動画で撮影。チェコにいるデービット・セケラック・コーチに送り、指示を受ける。日本語とチェコ語。互いに言葉は通じないため、翻訳アプリで英語に変換して意思疎通する。

 遠隔交流こそ昨年の躍進を支えた秘密だった。コーチ不在で不振にあえいだ18年。状況打破を願って、フィンランドの勉強会へ参加した。そこで、やり投げ王国といわれるチェコとのコネクションが生まれ、現コーチにたどり着いた。現地に滞在して指導を受け、帰国した後は、動画を送る→翻訳アプリでフォームの指摘を受ける、というスマホを駆使したネット交流を続けた。19年、2度の日本新はこうして生まれた。

 1メートル79、86キロのスケールが大きい体と、武者修行で磨いた助走のスピードアップが結びつき、昨年、劇的に記録が伸びた。東京五輪の参加標準記録も突破。フィールド種目で日本女子初のメダル獲得が夢ではないところまで力を付けた。

 今季は「まだ自分の中で、スピードが上がった状態で投げることに対して、恐怖心がある」という感覚を変えることが大きなテーマ。細部のカギは、試合中、スタンドで見守るコーチとのコミュニケーションになる。

 「試合だと(スマホの)持ち込みができないので、試合中に困らないように、(対面で)2人で話をするときは翻訳機を使わないようにしている。2人が共通認識できることを増やしています」

 1年延期になった東京五輪を戦うために、試合でのパフォーマンスを上げるために、チェコ語を少しでも習得しようと考えている。

 施設を使えず、やりを持てない今は我慢の時。故郷の北海道旭川市は雪が多く、11月半ばから4月半ばまで投げられなかった時代も経験している。「今回はそれと違って、これからさあシーズンというとこだったので、同じように冬季というふうに考えられないですけど、こればかりはどうしようもない。目の前の一日一日をどう練習できるかを考えて過ごしたい」。明けない夜はない。来夏きっと、国立競技場に桜が咲く。

 《12、16年の五輪銀相当》北口が昨年10月の北九州陸上カーニバルで出した日本記録66メートルは、12年ロンドン、16年リオデジャネイロの両五輪で銀メダルに相当する。ロンドンの2位はオーバークフォル(ドイツ)の65メートル16、リオはフィリョン(南アフリカ)の64メートル92だった。現在の世界ランキングは15位。昨年の世界選手権は13位で予選落ちしたものの、東京五輪での表彰台は決して夢ではない。

 【北口 榛花(きたぐち・はるか)】
 ☆生まれと家族☆ 1998年(平10)3月16日生まれ。父はパティシエの幸平さん、母は元バスケットボール選手の規子さん。幼稚園時代の夢は「パティシエとバスケットボール選手」。一人っ子。
 ☆スポーツ少女☆ 小1から中3までバドミントン。小6で北北海道代表として全国大会に出場して団体戦優勝。別の全国大会では個人でも16強に入った。3歳から水泳も行い、自由形専門。陸上は高1春から。
 ☆学力優秀☆ 国立の北海道教大旭川小、中を卒業し、進学校の旭川東高へ進んだ。地球温暖化に不安を覚え、環境保全に関わる仕事に就く夢もあった。日大スポーツ科学部卒。
 ☆金の卵☆ 高2、高3の全国高校総体を連覇。15年世界ユース(17歳以下)選手権で金。日本陸連のタレント発掘事業「ダイヤモンドアスリート」1期生に選ばれた。昨年5月、海老原有希が持っていた日本記録を更新。日本選手権初優勝。
 ☆音楽好き☆ 息抜きは「K―POP」の動画を視聴すること。特定の好きなグループはない。
 ☆アスリート人生を長く☆ 現在決まっている五輪の東京、パリ、ロサンゼルスの3大会へ「出たい」と意欲。「その先も分からない」と長い現役生活を望む。

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