競泳・大橋悠依 進化を確信した2月27日は“背中記念日”

[ 2020年4月6日 05:30 ]

スペイン合宿中の3月13日、インタビューに応じた大橋
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 東京五輪延期と五輪代表選考会を兼ねた日本選手権の中止を受け、競泳女子のエース大橋悠依(24=イトマン東進)は自身のSNSに「必ず、パワーアップします」とアップした。1年後の飛躍を誓った前向きなメッセージには裏付けがある。2月下旬からスペイン・シエラネバダで行った合宿中に進化を確信する“気付き”があったことを明かしていた。

 3月24日に東京五輪延期が決まり、翌日に五輪代表選考会を兼ねた日本選手権の中止が決定。目標のレースが消滅した翌朝に、大橋は自身のSNSで1年後の飛躍を誓っている。「“その日”に向けて頑張ってきた、が」と無念をにじませた上で「余裕を持ってさまざまなことを試す時間にしたいと思います。必ず、パワーアップします」と宣言。このメッセージは表面的なものではない。五輪開幕までの約1年4カ月の準備期間で、さらに進化できる確信を得ていた。

 スペイン・シエラネバダで合宿中の3月13日。その時点では東京五輪の通常開催が危ぶまれ、延期の議論が出始めた段階。先行きが不透明な中、大橋は「本当は21年(の世界選手権福岡大会)が終わって引退しようと思っていたけど、予定が狂ったかもしれません」と明かしていた。

 キャリアの構想が崩れかねない非常事態でも、視線は前を向いていた。2月13日からの合宿で、今後の飛躍を確信する特別な“気付き”があったからだ。

 「本当にある日突然なんですけど、2月27日の午後練習で“全然背中を使って泳いでないじゃん”と思い、背泳ぎでわざと背中を大きく動かす感じで泳いでみたんです。“なんか凄くねぇ”みたいな感覚はあったんですけど、その日は周囲に黙っていた。次の日もやってみて“めっちゃ良い泳ぎしてる”と確信できた。自由形、バタフライ、平泳ぎで試しても良い感覚だった。2月27日は凄く特別な日で、覚えておこうと思ってます。“背中記念日”ですね」

 17年世界選手権ブダペスト大会の200メートル個人メドレーで銀メダル。一躍注目を浴び、日本女子エースとなったが、18年夏以降は伸び悩んだ。本命種目個人メドレーの自己ベストは200メートルが17年世界選手権、400メートルが18年日本選手権を最後に更新できていない。
 「この2年ぐらいは凄く悩んでいた。凄く苦しい練習をしてもうまく泳げなかったから。でも今はその時間も無駄じゃなかったと思える。背中を意識してからは体に軸ができて、腕に力を入れなくても、水が当たって進む感覚がある。画期的です。もともと自分はこういう泳ぎをしていたなとも思った。今は泳ぐのが苦じゃない。2年間の悩みが解消された感じですね」

 昨年は意識的に東京五輪での金メダルを公言。だが、2月上旬の会食で、15年世界選手権カザン大会女子200メートルバタフライ金メダルの星奈津美さん(29)から助言を受け、考えが変わった。

 「金メダルをあまり考えず、自分の力を試したいのが今の自分の思い。一時は空気を読んで、金メダルを口にしていた。言わないと獲れない、とも思っていたから。でも奈津美さんから“口にしてそこにいくタイプと、また違うタイプもいる。できるところまでやり、その結果の金も全然ある”と言われた。自分はそっちでもいいのかな、と。金メダル、金メダルとならず、自分の限界にチャレンジしたい。今は頭もすっきりしています」

 練習から自身と向き合う時間の長い競泳陣にとって、延期の1年間は長く重い。それでも心身ともに一皮むけた日本女子エースの東京五輪への道は明るく照らされている。

 《スペイン合宿からの経過》▼2月13日 大橋らがスペイン・シエラネバダ合宿に出発。  ▼3月13日 日本水連が日本選手権の無観客、日程短縮を決定。25日に終了予定だったスペイン合宿の打ち切りも決まる。  ▼同16日 大橋が帰国。  ▼同24日 東京五輪の1年程度の延期が決まる。  ▼同25日 日本水連がいったんは日本選手権の開催を発表。小池都知事の外出自粛要請を受け2時間後に一転して中止を決める。 ▼同30日 東京五輪の開幕が21年7月23日に決定。

 ◇大橋 悠依(おおはし・ゆい)1995年(平7)10月18日生まれ、滋賀県彦根市出身の24歳。草津東高―東洋大卒。3人姉妹の末っ子。6歳で競技を始め、中学3年のジュニアオリンピック200メートル個人メドレーで全国初優勝。17年日本選手権で200、400メートル個人メドレーで2冠。初代表となった同年の世界選手権200メートル個人メドレーで銀メダル。昨夏の世界選手権は400メートル個人メドレーで銅メダル。身長1メートル73。血液型B。

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