高校ラグビー~戦術の変化をどう考える~大阪代表3監督に聞く

[ 2019年12月26日 05:30 ]

第99回全国高校ラグビー 27日開幕

17年度決勝 東海大仰星・河瀬(右)の決勝トライにつながったオフロードパス
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 自国開催のラグビーW杯で、大会史上初の8強入りをした日本代表は、かつて“タブー”だった片手でのパスを積極的に使い、日本の武器とされた低いタックルにとらわれずに躍進した。こうした戦術の変化を、高校指導者はどう考えるのか。あす27日開幕の第99回全国高校ラグビー(大阪府東大阪市、花園ラグビー場)に出場する、日本一経験がある大阪代表の3監督に現在の指導などを聞いた。 (倉世古 洋平)

 「ボールを片手で扱うな」は、死語になりつつある。今年のW杯で8強入りした日本代表が、タックルを受けながらボールをつなぐオフロードパスを駆使したこともあり、Bシード常翔学園の野上友一監督(61)は、「花園でもオフロードが増えるのではないか」と語った。

 オフロードパスは最短距離を突破するため、チャンスになりやすい。半面、片手で扱う場面が多く、体格や技術が必要とされる。1937年創部、全国優勝5回の同校は今、その高度なパスを奨励。11年のニュージーランド遠征がきっかけになった。

 「向こうはどんどんオフロードをしかけてくる。ところが日本ではそんなプレーは軽いとされているから、封じ方を知らない。これはいけないと思った」

 現地で「相手のどこに当たれば効果的か」という基本を学び、導入。これが重一生(神戸製鋼)らを擁した12年度の17年ぶり優勝につながった。「われわれの時代は“片手でパスして”と怒られたけど、柔軟に考えないと」。W杯の影響で、選手はより自由なプレーをするようになったという。世界のトレンドのキックパスも増えた。それを「軽い」ととがめる声は今、「大工大高」の流れを組む伝統校にはない。

 体と手が小さい日本人は「パスは両手」の考えが根付いていた。その風潮に10年近く前から変化が表れたのは、「海外ラグビーをテレビで見る機会が増えたから」だと、Bシード東海大大阪仰星の湯浅大智監督(38)は分析。「今は小学生でも片手でパスする」という。

 13年の就任から3度の全国優勝をした青年監督も“容認派”だ。17年度決勝、河瀬諒介(早大)の決勝トライは、オフロードパスをもらって抜けたものだった。ただし、「ボディーコントロールができていれば」と、注釈を付ける。問題は、「両手か片手か」ではなく、攻撃が継続ができるように、当たり方や倒れ方を習得することが大事だと訴えた。

 連覇を狙うBシード大阪桐蔭・綾部正史監督(44)は「高校と大人のラグビーは結び付かないと思う」としながらも、「今は継続をうながすルールであり、プレーが長く続けば、選手もファンも楽しい。それは日本代表でも花園でも共通する」と、つなぐ意識の重要さを口にした。

 当たりの強さが際立った昨年の初栄冠からさらに強化すべく、今年はW杯前から「去年はコンタクトの後にパスをする選択肢はなかった。もう少し離そうという意識でいる」と、オフロードパスのような練習を少し取り組んでいるという。

 高校でも組織ディフェンスの進化が著しい。「両手」にこだわっていては、突破できない。W杯日本代表をきっかけに、その意識がさらに全国に浸透するかもしれない。

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2019年12月26日のニュース