日本陸連失態 IOCに“選手の声”届けず 五輪マラソン変更前に関係者から意見集約も

[ 2019年11月6日 05:30 ]

記者会見する(左から)瀬古プロジェクトリーダー、麻場強化委員長、河野ディレクター
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 国際オリンピック委員会(IOC)が20年東京五輪のマラソン・競歩の開催地を東京から札幌に変更したことを受け、日本陸連の強化委員会が5日、都内で会見を開いた。陸連の事務局は札幌移転が決まるとみられていた10月30日からのIOC調整委員会を前に選手、指導者からの意見を集めながら、IOC側に提出していなかったことが判明。陸連内の認識の食い違いで現場の声が届かないまま、札幌開催が決定していた。

 急転直下の五輪・マラソン札幌開催決定の裏で、日本陸連が失態を演じていた。IOCが札幌案を突如、発表したのが10月16日。陸連の事務局は開催地変更が決定するとみられていた同30日からのIOC調整委員会を前に、河野匡長距離・マラソンディレクターを通じて選手、指導者から意見を集約。世界各国の選手の意見の反映を求めたり、日本のマラソン熱を訴える内容だったが、日本陸連の事務局はIOCに提出していなかった。

 日本陸連の風間明事務局長は「調整委員会で何かを言える立場ではない。(日本陸連が)出しにいくということではない、という認識だった」と説明したが、TOKYOを目指してきた現場の思いは違う。IOCの決定を覆すことは不可能でも、せめてもの抵抗として、当事者の声を調整委員会に届けてほしかった。国際陸連の理事を務める日本陸連の横川浩会長には提出されたものの、陸連内で認識の食い違いが発生した。「選手の声は届けられるという思いだった。届かなかったのは無念」と話した河野ディレクターは「理解不能な移転。死ぬまで心から消え去ることはない」と強い言葉で不満を口にした。

 札幌開催の正式決定から4日が経過し“今さら感”が拭えないこの日の会見。「札幌開催について強化委員会としては、あってはならない決定だ」と語気を強めた麻場一徳強化委員長は「日本陸連」ではなく、「強化委員会として」と強調。強化サイドと事務方との温度差が浮き彫りになったが、懸命に気持ちを切り替え、札幌での東京五輪を目指す。

 《瀬古氏不満爆発》日本陸連の瀬古利彦マラソン強化戦略プロジェクトリーダーは「我々も真剣にやっていた。何で変わったのか本当のことを知りたい」と不満を爆発させた。一方で男子代表の服部勇馬(トヨタ自動車)から、日本がボイコットした80年モスクワ五輪を引き合いに「まだ札幌でできるのは(当時代表だった)瀬古さんと比べて幸せ」と言われ、涙を流したという。「今回は政治ではないがIOCの力には勝てない。IOCの前には瀬古利彦も無力」と肩を落とした。

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