宇野V3!右足首捻挫も信念貫き強行出場「ケガに感謝したい」

[ 2018年12月25日 05:30 ]

フィギュアスケート 全日本選手権最終日 ( 2018年12月24日    大阪・東和薬品ラクタブドーム )

冒頭のジャンプを必死に耐える宇野(撮影・小海途 良幹)
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 プライドだけが、宇野の体を動かしていた。プログラムが始まる直前に両手で両太腿を叩く。「パン」という音が静寂のリンクに響いた。コンディションの悪さは明白。だが、最初の3本のジャンプを、バランスを崩しながら耐えた。故障を抱えながら、4回転を3本挑戦した。国際連盟非公認ながら、今季自己ベストの合計289・10点。「自分を信じられなかった」と、不完全燃焼続きだった今季のこれまでと違い、自分を褒められた。

 「ケガをしたことで自分を信じた演技ができたと思う。変な言葉になりますが、ケガに感謝をしたい」

 SPがあった22日の異変の詳細が、明らかになった。氷上練習前の午前のウオーミングアップ中に、右足をひねったという。SPはぶっちぎりの首位発進をしたものの、樋口美穂子コーチ(49)によると、「その夜は歩けない感じだった」というほど悪化した。

 翌23日は公式練習を休み、病院で捻挫の診断を受けた。トレーナーが必死の治療をした。勝負のフリー当日。午後の公式練習は、着地のたびに右足をかばうしぐさを見せた。痛みが残っているのは明らかだった。滑り終えた後、出場を見合わせたい樋口コーチが尋ねた。

 「どうしてそこまで出たいの?気持ちをはっきり教えて」

 短く答えた。

 「宇野昌磨という選手の生き方はこうなんです」

 平昌五輪銀メダリストはなぜ、ここまでこだわったのか。3連覇を達成した後に「全日本は僕にとって大きな試合。歩けるなら、僕は試合に出たいという気持ちなので」と答えた。表彰式ではスケート靴をはかず、スニーカーで登場。トコトコと歩いて表彰台の真ん中に上がった。

 2月の四大陸選手権(米国)と3月の世界選手権の代表に選出された。「アクシデントがあったからこそ、自分を信じられた。この経験をシーズン後半戦に生かしたい」と前を見る。主要国際大会は6連続で銀メダル。苦難を乗り越えたこの勝利が、世界一への懸け橋になる。

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