宇津木監督が上野を連投させた理由、2年後に向けてまいた種

[ 2018年8月15日 10:00 ]

<日本・米国>10回タイブレーク2死二、三塁、スチュワートにサヨナラ安打を打たれた上野(右奥)はマウンド上で立ち尽くす(撮影・西川 祐介)
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 上野、上野でサヨナラ負け。上野の1日2完投、合計249球の力投もむなしく、12日のソフトボール世界選手権決勝で日本は米国に敗れた。

 結果だけ見れば、絶対的なエースに頼って勝利に固執し、それでも力及ばなかったという見方もできる。米国が小刻みな継投を見せたこともその印象を強めただろう。しかし大会全体を振り返ってみれば、宇津木麗華監督がただただ勝利を追い求めていたわけではないことが分かる。

 そもそも最終日の上野連投には日本投手陣の苦しい台所事情があった。「浜村がいれば昨日の準決勝は浜村で、今日は藤田―上野という選択肢もあった」と決勝の後に宇津木監督も明かしていた。

 負けても優勝の可能性が残る準決勝は23歳の浜村に任せ、3位決定戦を藤田、決勝で満を持して上野を登板させる。だが開幕前に浜村が脇腹を痛め、今大会は回復が間に合わなかった。藤田は準決勝で延長8回を投げ抜いて疲労困憊(こんぱい)。消去法として上野連投しかなくなっていた。

 ブルペンには将来を嘱望される19歳の勝股もいたが、本気の米国とやり合うにはいかんせん実力不足。浜村と勝股の若い2人で継投した1カ月前の国際大会では、決勝で米国に10点を奪われて完敗していた。上野が「浜村や勝股はもっとスキルを磨いていかないと、まだまだ使ってもらえるレベルじゃない」と語ったように、若い投手を強引に起用すれば試合を壊してしまう恐れがあった。

 米国と最大2試合戦うチャンスを得るために首位突破にはこだわり、1次リーグから要所では惜しみなく上野を投入した。結果的に米国と2戦連続延長の接戦を演じ、打線は相手に劣らぬ破壊力を見せた。これは大きな収穫となったはずだ。

 さらに宇津木監督は上野にも経験を積ませたかったのだという。膝の故障から復活を遂げて「まだまだ進化できる」と期待するからこそ、「これが練習になる」と最後は迷いなく連投を課した。「ブルペンでは500球でも600球でも投げれる。でも試合はやっぱり違う。2020年を考えたときに、何が通じて何が通じないのかを知ってほしかった」

 今大会で得られる経験値を最大化するための努力はもう1つ。「このチームで一番成長しないといけない選手」と考える捕手・我妻に、決勝では全ての配球を委ねた。バッテリーとしての力を上げるには、投手だけでなく捕手の成長も不可欠。「何回もタイムをかけてマウンドに行きたかったが、ここで行って彼女の思考を止めてしまったらどうしようかなと思い、自分の足を止めました(笑い)」

 東京五輪に向けて格好のリハーサルだった地元開催の世界選手権。勝負を捨てず、選手を育てる。そのタイトロープの中で、指揮官は2年後を見据えた勝負手を打ち続けていたのである。(雨宮 圭吾)

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