女子が男子と戦う意義は?〜バトル・オブ・ザ・セクシーズ〜

[ 2018年7月26日 10:30 ]

子供たちにサインするリンシカム(AP)
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 女性アスリートが男性アスリートと同じ土俵で戦えばどちらが勝つのか。女性と男性は果たしてどちらが優位なのか。これは古くから人々の興味を引いてきたテーマである。

 今月6日から日本公開された映画「バトル・オブ・ザ・セクシーズ」にもそうした戦いの1つが描かれている。1973年、女子テニス界のトップに君臨していたビリー・ジーン・キング(米国)と4大大会シングルスで3度の優勝経験を持つ当時55歳のボビー・リッグス(米国)がエキシビションマッチで対戦した。

 当時のウーマン・リブ運動の盛り上がりもあいまって、「バトル・オブ・ザ・セクシーズ(性差を超えた戦い)」と銘打たれた一戦は世界的な注目を集めた。会場のアストロドームには3万人の観衆が詰めかけ、全世界で9000万人が視聴したという。一個人を超えて女性代表として戦う巨大な重圧はエマ・ストーン演じる劇中のキングからも十分に伝わってくる。

 タイムリーなことに、つい最近も1人の女子ゴルファーが「バトル・オブ・ザ・セクシーズ」に挑んだ。タイガー・ウッズがメジャーで久々の優勝争いを演じた全英オープンの裏で、米ツアー8勝、メジャーでも2勝を挙げているブリタニー・リンシカム(32)が、米男子ツアーのバルバソル選手権に出場したのである。

 テニスのようにゴルフでも同じような挑戦が繰り返されてきた。03年には女子ツアーを席巻していたアニカ・ソレンスタム(スウェーデン)が米男子ツアーに出場。男子のみならず、身内であるはずの女子選手からも反発が出るなど、当時はさまざまな軋轢を生んだ。

 彼女自身がどれだけ個人の成長のためと強調しても、そこには常に「女性」「女子ゴルフ」の看板がつきまとっていたからだ。そのあまりの大きさにプレーを終えたソレンスタムは涙を流していた。

 ところが今回のリンシカムはそうした切迫感とは無縁、キングやソレンスタムに比べればずっとカジュアルな挑戦に見えた。これも時代の流れだろうか。リンシカムとソレンスタムの立場の違い以上に、いまや男女を単純比較する向きが薄れ、あくまでも個人の挑戦と捉える時代になってきたのかもしれない。

 ちなみに彼女の結果はカットラインに遠く及ばず予選落ちだった。しかし2日目にはアンダーパーをマークし、イーグルも奪取するなど、男子ツアーでの戦いを存分に楽しんだようだった。

 男女の機会均等が叫ばれる現代。男性もシンクロナイズドスイミング(今はアーティスティックスイミングですが)に挑む時代である。ならば次は逆のパターンがあってもいいのではないか。競技力では優位と見られている男性が女子ツアーに参戦する。勝って当然のプレッシャー、ある程度の好奇の視線を浴びながら、それをどう克服するか。そんな新しい形の「バトル・オブ・ザ・セクシーズ」も近いうちに見られるかもしれない。(雨宮 圭吾)

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2018年7月26日のニュース