せめて青々とした芝を…世界レベルと言えぬ「秩父宮ビーチ」問題

[ 2016年3月15日 08:00 ]

【左】2月1日、張り替えのために芝をはがす作業が行われた秩父宮ラグビー場【右】2月26日、張り替えた芝の境目(中央の縦線)に生じた段差などを確認するサンウルブズのフッカー堀江主将(左端)、プロップ稲垣(左から3人目)ら

 隣の芝生は青い、とは、よく言ったものだ。スーパーラグビー第3節の12日、日本のサンウルブズがチーターズと対戦した第2のホーム、シンガポールのナショナルスタジアムは、全面に青々とした芝が生い茂っている様子がテレビ画面を通じて見て取れた。実際に試合を行った選手いわく、芝は短めで地面は少し硬めだったとか。天然芝と人工芝がミックスされたハイブリッドターフを採用しているからこその“青さ”なのかも知れないが、砂場のようなグラウンドよりはマシだろう。

 1月31日の日本選手権をもって閉幕した国内のラグビーシーズンで、大きな話題となっていたのが「秩父宮ビーチ」問題だ。ご存じの方も多いと思うが、シーズンが深まるに連れて芝が荒れ、特に中央部分は完全に芝がはげ、グラウンドが砂場化した。秩父宮ラグビー場は週末のトップリーグや大学公式戦はもちろん、時として平日も使用されており、新たに種をまいても新芽が育つだけの時間がない。実際に試合中、砂場に足を取られて転倒する選手も多く、明らかにゲームの質を落としていた。当然ながら選手、そしてお金を払って観戦しているファンにとっても、マイナス以外の何物でもなかった。

 2月1日、傷んでいた芝が早速剥がされ、鳥取県内で養生されていたという新しい芝に張り替えられた【写真左】。しっかりと根を張り、2月27日のスーパーラグビー開幕戦には青々としたピッチが広がっている――。そう期待していたが、裏切られた。張り替えられたのは中央の40×50メートルのみ。古い芝と新しい芝の境目には段差が生じた【同右】。同26日、前日練習を行ったサンウルブズの選手たちは、ピッチに出るなり、その部分の確認を入念にしていた。漏れてきた声は「やばいっすね」「これ、危ないわ」などなど。せっかくの世界最高峰リーグの門出だったが、グラウンドは世界レベルとはほど遠かった。

 ラグビー場を所有・運営する日本スポーツ振興センター(JSC)の担当者によれば、芝を張り替える費用は「おおむね1平米あたり1万円」で、40×50メートルを張り替えれば2000万円。全てを張り替えれば億単位となり、決して安くはない。芝の生育を考えれば「年間60試合くらいがベスト」というが、その数字をはるかに超える試合が毎年行われている。さまざまな状況や制約があり、結果として無残な状況で開幕を迎えてしまったことは理解に難くない。しかし、それでも、何とかならなかったのか。

 前日練習の日、WTB山田章仁は言った。「つまずきました。段差もあり、ケガのリスクもある。選手としては声を大にして言うべきかと」と。「聖地」という枕詞にあぐらをかいている場合ではない。仕方ない、と諦めてはいけない。はっきり言って、スタンドは旧式で何の魅力も感じない。ならばせめて、青々とした芝だけでも、選手とファンに提供してもらいたい。その程度のことをできずして、新国立競技場の運営などおこがましい、とも記しておく。(阿部 令)

続きを表示

「大坂なおみ」特集記事

「羽生結弦」特集記事

2016年3月15日のニュース