NFL 脳振とうとの因果関係初めて認める、米下院で公聴会

[ 2016年3月15日 18:03 ]

NFL健康安全部のミラー副部長(AP)

 NFLは14日、米下院の公聴会で初めてフットボールと脳振とうによる慢性外傷性脳症(CTE)との間に因果関係があることを正式に認めた。

 この件に関してはウィル・スミス主演の映画「コンカッション(脳振とう)」でNFLの組織的な“隠蔽(いんぺい)工作”が描かれ社会問題化。シャコウスキー下院議員(イリノイ州選出)の「因果関係はあるのか?」という質問に対し、NFL健康安全対策部のミラー副部長はボストン大の専門医の見解を提示した上で「疑いの余地はない」と答え、あいまいにしていた従来の立場を議会の場で変更した。

 NFLでは引退した選手が次々に認知症を発症したり自殺するなどのケースが続出し、選手の家族などからの集団訴訟に発展。その一方でNFLはタグリアブー前コミッショナーの時代から脳振とうに関する専門部会を設立していたにもかかわらず、常に脳振とうとCTEの因果関係を否定する見解を示し続けてきた。映画「コンカッション」にも登場する病理解剖学者がCTEの存在を明らかにしても態度を変えず、CTEが死後の脳を解剖することでしか判明しないこともあって積極的なアプローチを行うことはしなかった。

 その背景にはもし病気を認めてしまえば選手数が減少し、スーパーボウルを頂点とするNFLの巨大ビジネスが崩壊するという危機感があったとされており、それが対応の遅れにつながったとも指摘されている。

 シャコウスキー議員は「CTEの危険性をNFLが軽視し、安全に関する誤った認識を広めた」と批判。今後はなんらかの症状がある元選手へのケアと、病気を未然に防ぐための具体的な方策が求められることになるだろう。

 *CTE(慢性外傷性脳症)=反復する脳への衝撃が原因で発症する進行性の脳症。脳振とうなどの外傷を受けてから数年から十数年経過したあとに記憶力の低下、抑うつ状態、さらに認知症などの症状が出てくる。脳を解剖すると、タウというたんぱく質の蓄積と脳組織の変成が認められる。

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2016年3月15日のニュース