羽生、ファイナル滑り込み 「終わった…」一転0・15点差で

[ 2014年11月30日 05:30 ]

演技を終え、腰に手を当て複雑な表情を見せる羽生

フィギュアスケートGPシリーズ第6戦 NHK杯第2日

(11月29日 大阪・なみはやドーム)
 わずか0・15点差の薄氷切符だ。男子ショートプログラム(SP)5位だったソチ五輪金メダリストの羽生結弦(ゆづる、19=ANA)はフリーでミスを連発。合計229・80点にとどまったが、229・65点のジェレミー・アボット(29=米国)を上回って4位に入ったことで連覇を狙うファイナル(12月11日開幕、スペイン・バルセロナ)の出場権を獲得した。無良崇人(23=HIROTA)も234・44点の3位で、初のファイナル進出。村上大介(23=陽進堂)が246・07点で初優勝した。

 ファントムを演じ終えた羽生が歓声の中、絶望しながらつぶやいた。「終わった…」。短いフレーズには2つの意味を込めていた。苦しい試合が終わったこと。そして、GPシリーズ上位6人が進める、ファイナルへの道が閉ざされたこと。ほぼ諦めていたが、後から演技したアボットを0・15点上回ったことで、出場6人目に滑り込んだ。優勝した村上大、3位の無良に続いて受けた場内インタビューではファンに謝罪し、ファイナル切符への驚きを口にした。

 「皆さんにこういう演技を見せてしまって、申し訳ない。すみません。もう一回、言います、すみません。(ファイナルは)凄くビックリしているし、中国での試合が無駄にならなかったなと思っている」

 苦しい4分30秒だった。3週間前、激突からの強行出場で5度も転倒した、中国杯フリーの154・60点にも及ばない。衣装を新調して臨んだ「オペラ座の怪人」。冒頭の4回転サルコーが2回転になり、4回転トーループは3回転になった上に転倒した。演技終盤、コンビネーションで跳ぶはずだった3回転半も1回転半に。「練習できなかったと思われる方がたくさんいると思うけど、そうじゃなくて、これが僕の実力」と険しい表情を浮かべた。

 死すら覚悟した激突の恐怖は、深層心理に深く刻まれている。26日の大阪入り後、5~6人が同時に滑る練習をこなした羽生は周囲に漏らした。「怖い」――。28日のSP直前、6分間練習のリンクに立った。「びくびくしていたしスピードもなかった。トラウマになっている」と関係者。SPはまさかの5位。フリー前の6分間練習では4回転サルコーに着氷するなど好調ムードだったが、本番につながらなかった。

 GPシリーズ3年ぶりに参加を許されなかった表彰式。スポットライトを浴びるライバルをリンクサイドから見つめた。「悔しいものは悔しい。つらいものはつらい」。12月7日で20歳になる。10代最後の試合となった今大会で得たものを問われ「自分の弱さ」と言った羽生は、懸命に前を向いた。「出場は正しかった。ミスはたくさんあったけど後ろに下がるわけじゃない」。日本男子初のファイナル連覇へ。スケート人生最大の苦境で味わった悔しさが、プリンスのハートに火を付けた。

 ▼ブライアン・オーサー・コーチ 奇跡を起こしてほしいと思っていた。練習では確実に良くなっていた。五輪金メダリストの次のシーズンは、誰がやっても苦労する。いい教訓になった。大きな大会へ次のステップを踏み出したと思っている。

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