白鵬 史上3人目30回目V!「昭和の大横綱に肩並べた 幸せ」

[ 2014年7月28日 05:30 ]

30回目の優勝を達成した白鵬(右)は安美錦(左)を旗手に沿道のファンに赤いバラを投げ込む

大相撲名古屋場所千秋楽

(7月27日 愛知県体育館)
 横綱・白鵬(29=宮城野部屋)が優勝30回の偉業を達成した。千秋楽の結びの一番で日馬富士(30=伊勢ケ浜部屋)を左上手出し投げで撃破。13勝2敗で最多優勝32回の大鵬、31回の千代の富士に次ぐ大台到達を2連覇で果たし歴代の名横綱に並ぶ領域に入った。関脇・豪栄道(28=境川部屋)は大関・琴奨菊(30=佐渡ケ嶽部屋)を下して12勝目を挙げ大関昇進を確実とした。
【取組結果】

 満員札止めの館内で、ため息が大きな歓声に変わった。優勝争いしていた2敗の琴奨菊が敗れ、勝てば優勝という結びの一番。白鵬は日馬富士に右差し、左上手も取られる苦しい体勢となったものの、何とかこらえながら左上手を取ると、間髪入れず出し投げで相手を土俵に転がした。大鵬、千代の富士に次ぐ30回目の大台到達。偉業を成し遂げた横綱は「優勝30回に近づくほど苦労したから、達成感がある。大変うれしく思う。心と体が一致しない部分があったが、最後は落ち着いてやればいいと思って信じてやれた」と振り返った。

 普段はあまり数字を気にしないが、この日ばかりは息をついて感慨に浸った。それだけの理由があった。体調は万全ではなかった。09年から睡眠時に気道がふさがる「睡眠時無呼吸症候群」と闘っている。数時間足らずの昼寝の時間でさえも空気を送って睡眠時の気道を確保する「CPAP」というチューブ付きマスク装置を着用。今場所は宿舎の電気容量が足りずにブレーカーがしばしば落ちた。寝苦しい夜に睡眠を妨げられ、猛暑にも体をむしばまれた。9日目には玉鷲のおっつけで右肘を痛めた。師匠の宮城野親方(元幕内・竹葉山)は「いつもと全然違う表情。寝不足で集中できなかったと思う。心配でした」と振り返った。

 それでも優勝を30回の大台に乗せることができたのは、白鵬の精神的な強さでもある。10年の野球賭博問題、11年の八百長問題と不祥事続発で相撲界への風当たりが強まった中、10年2月から12年9月まで一人横綱だった。ホープ遠藤の出現など相撲人気は回復傾向にある。この日、名古屋場所では15年ぶりに2桁の10日間となる大入りを記録した。それも白鵬が困難な時代を1人で支えたからこそだ。大きな節目を迎えた平成の大横綱に対し、優勝31回を誇る九重親方(元横綱・千代の富士)は「しっかり頑張ってきた結果だ。大きな数字だけど、白鵬にとっては通過点にすぎないだろ」と称えた。北の湖理事長(元横綱)も「30回と言わずに大鵬さんの優勝回数(32回)を目標にしてほしい」と期待した。

 「昭和の大横綱である大鵬関、千代の富士関に肩を並べた。その景色にいる自分は幸せ」と白鵬は語ったが、2人を追い抜くのも時間の問題だ。「故郷に帰って父にいい報告ができます」と28日にはモンゴルへ帰郷。英気を養い、さらに上を目指していく。

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