桐生 離脱の山県から“魂のバトン”受け取った

[ 2013年8月15日 06:00 ]

治療のため帰国する山県

陸上世界選手権第5日

(8月14日 モスクワ)
 ワンダーボーイが離脱エースの思いを背負う。10日の男子100メートル予選で左太腿裏を肉離れした山県亮太(21=慶大)が14日、モスクワから帰国の途に就いた。大会期間中は桐生祥秀(17=洛南高)とホテルが同部屋で、桐生が18日の400メートルリレーで激走を誓っていたことを明かした。また、同便でモスクワを離れた女子マラソンの野口みずき(35=シスメックス)が現役続行を表明。男子50キロ競歩では、谷井孝行(30=SGHグループさがわ)が3時間44分26秒で9位に入った。

 エースの無念は誰よりも分かっている。今大会、17歳の桐生は憧れの先輩・山県とホテルが同部屋だった。100メートルはともに予選で散っただけではなく、山県は左太腿裏の肉離れも発症して400メートルリレーもアウト。失意が漂う室内で2人で話し合っている中、桐生は「(リレーは)任せてください!(治療を)頑張ってください!」と先輩を気遣いながらリレーでの激走を誓っていた。本来、1走・桐生から2走・山県とつなぐはずだったが、魂のバトンは山県から桐生に渡った。

 山県はこの日、日本で治療するためにモスクワを離れた。ホテル出発前は大会が始まってから初めて短距離陣が一緒に朝食を取り、空港に向かう際にみんなが見送ってくれた。「チームに貢献できなくてすごく落ち込んだ」と言う山県だが、短距離陣に「みんなに任せた」と話し、思いを託した。山県は帰国後、都内で精密検査を受ける。無理をしないという条件で、9月の全日本学生選手権、10月の東アジア大会を目指す。「リレーはテレビで応援します」。桐生らの激走に声をからし、完全復活の時を待つ。

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2013年8月15日のニュース